スタッフルーム実況中継
とある新築分譲マンションのモデルルームでの話である…。
モデルルームの奥に位置するスタッフルーム。ウソと説教と本音が飛び交う空間…もちろん一般人は立ち入り「絶対」禁止。
「少々お待ち下さい。」
接客中、爽やかな笑顔の営業マンがお客様にそう一言告げ、ニコニコしながらスタッフルームへ入っていく…。
これは、あくまでも架空の業者の話であり、優良な業者も数多く存在する。「こんな業者がいたらイヤだな…」という妄想として見ていただきたい。
スタッフルーム |
上司 | : | 「おう、重説(重要事項説明)ちゃんとできてるか?」 |
営業マン | : | 「ええ、何点か突っ込まれました。」 |
上司 | : | 「あん?何でやねん。お前、まさか丁寧に説明してるんちゃうやろな?」 |
営業マン | : | 「えっ?いえ、後で揉めないように分かり易く説明してますが…。」 |
上司 | : | 「アホかお前は!分かり易く説明すれば、客が内容分かるから突っ込みやすくなるに決まってるやろが!言えば言うほど質問が出てくるんじゃ!さらっと説明せんか!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「言いにくいところは飛ばしてもええぐらいじゃ!ほんまは説明義務違反やけどな。んな事どうせ知らんやろ。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「どうせ、客は今は不安やから適当に突っ込んでくるモンなんや。んで、どうせ契約が終わったらコロっと忘れおるんじゃ。」 |
営業マン | : | 「そうなんですか?」 |
上司 | : | 「おう、後で揉め事を起こすやつが、常に吐きおるセリフが「重要事項説明なんか受けてない」や。重説は、けっこうマイナスの事も書いてるやろ?んで、専門用語で大事なこと書いてるやろ?だから、どんだけ分かり易く説明したところで、後で揉め事が起きる可能性はあるんや。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「でも、説明の最後に、「説明を受けました。」ってサインさせるやろ?ほんなら、こっちはしっかりと説明して、客が納得したことになるやろが。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、後で文句言ってくるやつに、じゃあ重説にサインしてないんか?って重説持ってこさせたら、当然承諾のサインしてあるんや。しっかり聞いとかん方が悪いんやろが。全く、アホどもが。」 |
営業マン | : | 「そうですね。」 |
上司 | : | 「だから、丁寧に説明してもムダや。時間がもったいないわ。お前も時間かかりすぎや!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「んで、何を言ってるんや、そいつ?」 |
営業マン | : | 「はい、まず、何で住宅性能評価書を交付してもらわなかったんですか?と…」 |
上司 | : | 「だから何やねん?あんなモンあってもなくても一緒やろが。コストかかるからとらんかっただけやろが。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「下らん事聞きやがって。別にあれがなくてもしっかり建ててたら問題ないんじゃ。「しっかり建ててますし、あれは全く意味のないものです。逆に、コストがかかり、お客様の負担を増やしたくないために、とるのを見送りました。」とでも言っとけや。」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「後は?」 |
営業マン | : | 「管理会社の対応はどうですか?と…」 |
上司 | : | 「何じゃそりゃ?そんなモンお前でも分かるやろが。何で答えられへんのや?」 |
営業マン | : | 「ええ、実績集がなかったので、具体的な返答ができなかったので…。」 |
上司 | : | 「アホかお前は?そんなモンいらんやろが。そいつ分譲マンション経験したことないんやろ?管理会社の細かい説明受けても分からんやろが。「大丈夫ですよ。事務所も近く、対応も迅速にしますし、評判もいいですよ。」って適当に言っとけば納得しおるわ。そんな事はさらっと流さんかい!ほんまは対応悪くてすぐ管理組合の反発くらってクビになるけどな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「別に対応悪かったら、すぐ代えたらええやろが。大体、そいつもアホなやつやのぉ。営業にそんな事聞いて、ダメですとか言うわけないやろが。」 |
営業マン | : | 「そうですね。」 |
上司 | : | 「大体、最近はインターネットやら雑誌でも管理会社の評判よく書いてるやないか。チェックせんやつが悪いんや。そんなに気になるんやったら、実際に管理会社が管理しとる分譲マンションに行って入居者の意見でも聞いてきたらええんや。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、他には?」 |
営業マン | : | 「はい、転職しようと思ってるんですが、ローンの承認おりれば転職してもいいんですか?と…。」 |
上司 | : | 「車のローンも残ってるやつが何を偉そうなことぬかしとんねん。承認おりても実行前に転職したら承認取り消されて違約や。念のために、入居始まるまで転職するなって言っておけ。」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「大体、そいつ自分で銀行融資やるんやろ?自己資金扱いやから、車の残債消せんとローン通らんかったら違約扱いやぞ。ちゃんと説明しとけよ。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「しかし質問の多いやつやな。まだ何か言ってんのか?」 |
営業マン | : | 「はい、後は…、登記に関してですが、ここの土地に、かなりの根抵当を設定してますね…。と…。」 |
上司 | : | 「ちっ…、うっとうしいところ突いてきやがるな。んで何て答えたんや?」 |
営業マン | : | 「そうですね、これは珍しいですね、と…。」 |
上司 | : | 「相変わらずアホやな、お前は。客不安がるやろが!「大丈夫ですよ。どこも大体これぐらい設定してますし、引渡しまでには、しっかりと抹消して、きれいな状態にしてお渡しします。」と伝えておけ。重説にも書いてあるやろが。」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「何社も打ってるからあんまり財務よさそうには見えんけどな。さらっと流さんとアカンぞ。」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「大体、重説はどこも似たような内容なんや。「どの物件も通常はそうしてます。」っていうのを前提に話進めんかい。」 |
営業マン | : | 「分かりました。質問は以上です。」 |
上司 | : | 「おう、さっさと終わらせろ。最後の、物件特有の事項は、俺らにとって何のメリットもないから、さらっと流せよ。質問なんぞさせるな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、ここ管理業務委託費ぼったくってるやろ?管理規約集は見せんなよ。長期修繕計画もな。ここ修繕積立金めちゃ上がるやろ。できるだけ隠せよ。説明義務ないモンは、説明せんにこした事はないからな。」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「駐車場代もここ安いからな。駐車場代は管理費・修繕積立金に充てる金や。将来、当然上がるからな。突っ込まれたらうっとうしいけど、突っ込まれんかったらええんや。気付かれんなよ。」 |
営業マン | : | 「はい。では、行ってきます。」 |
上司 | : | 「おう。」 |
営業マン | : | 「重説終わりましたが、売契(売買契約書)で質問が…。」 |
上司 | : | 「またか。何や?」 |
営業マン | : | 「瑕疵担保責任って何ですか?と…。」 |
上司 | : | 「それぐらいお前でも分かるやろが。買主の気付かんような、隠れたキズやら欠陥があった時に、新築やったら10年間、売主が損害賠償やら修理やらの義務を負うモンやろが。」 |
営業マン | : | 「はい、それは説明しましたが、売主が倒産したらどうなるのかと…。」 |
上司 | : | 「うっとうしいやつやな。売主がコケたら、誰も義務負わんわ。泣き寝入りや。そんなん怖れてたらどこも住めんやないか。アホかそいつ。「ここの売主は大丈夫ですよ」、って実績アピールして、逃げとけ。実際、かなり在庫抱えてるからヤバいかもしれんけどな。かなりの数建てて、売ってる戸数は多いんやから、素人は納得しおるやろ。」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「耐震偽装もけっこうやってる業者多いからな、バレたら一瞬でアウトや。まあ、俺らは販売会社やから、責任はないからどうでもいいけどな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「まあ、住宅瑕疵担保履行法で、今後は保険やら供託やら事前にしていかなアカンから、買主のリスクも減るやろうけどな。今は微妙な時期や。まあ、大丈夫やって立証できるモンがない以上は、逃げとけ。」 |
営業マン | : | 「はい。質問は以上です。」 |
上司 | : | 「おう、ほんなら、契約にサインさせたら、「今後も末永くお付き合い、よろしくお願いいたします。ご質問ございましたら、何なりとお気軽にお申し付け下さい。」って丁寧に挨拶しとけよ。客なんぞと付き合いたくないけどな、営業マンは契約後はほったらかしってイメージが強いからな。できるだけ、いい印象与えとけ。まあ、質問してきたら、逃げるだけやけどな。」 |
営業マン | : | 「分かりました。では、行ってきます。」 |
上司 | : | 「おう!」 |
そして、スタッフルームから営業マンが出てくる…。
何事もなかったかのように、客の目の前に座り、慌てて説明を開始する…。
なぜか妙に急いでいる…。
これは、あくまでも架空の話であり、本当にこんな状況なのかは、想像にお任せします。
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