スタッフルーム実況中継15 - 中古物件検討客 - マンション接客のウソと本音

スタッフルーム実況中継

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第15話 - 中古にするだと？

とある新築分譲マンションのモデルルームでの話である…。

モデルルームの奥に位置するスタッフルーム。ウソと説教と本音が飛び交う空間…
もちろん一般人は立ち入り「絶対」禁止。

「少々お待ち下さい。」
接客中、爽やかな笑顔の営業マンがお客様にそう一言告げ、ニコニコしながらスタッフルームへ入っていく…。

これは、あくまでも架空の業者の話であり、優良な業者も数多く存在する。「こんな業者がいたらイヤだな…」という妄想として見ていただきたい。

スタッフルーム

上司	：	「おう、どないや？」
営業マン	：	「はい、ここの物件は、金額が高すぎて、検討できないと…。」
上司	：	「あん？ちゃんと近隣の物件と比較して説明してんのか？」
営業マン	：	「はい、それはしていますが…。」
上司	：	「ほんなら、ウチの物件そんな高くないのが分かるやろが。」
営業マン	：	「いえ、それでも高いと…。」
上司	：	「アホかお前は！そんなん言ってたら、そいつどこも買えんやないか！ウチは安さがウリなんやぞ！価格で納得させなアカンやろが！」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「そいつの借入限度なんぼや？」
営業マン	：	「はい、年収から考えると、4000万ぐらいは組めるかと…。」
上司	：	「ほんなら問題ないやろが。他に借入できん事情があるんちゃうんか？他にローンがあるやら、問題はないんか？」
営業マン	：	「いえ、それはないと…。」
上司	：	「ほんまなんか？」
営業マン	：	「ええ、多分…。」
上司	：	「ちゃんと疑って突っ込んでんのか？」
営業マン	：	「いえ…。」
上司	：	「アホかお前は！客を疑えって何回も言ってるやろが！お前の話やったら、そいつ年収もあって何の問題もないのに、支払いムリやってことになるんやぞ。言ってることムチャクチャやないか！」
営業マン	：	「はい。で、新築の検討をやめて、中古で探すと…。」
上司	：	「おお、苦しくなったヤツが言い逃れで真っ先に吐くセリフやな。単純に金額で比較して、中古の方が安くてお得やと思いおるんや。んで、それで新築の営業マンが諦めてくれるとでも思っとんのやろ。」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「もちろん、そんなんで許してやるほど、お前は甘くないよのぉ？」
営業マン	：	「え、ええ…。」
上司	：	「何やその返事は？お前、まさか、それであっさり引き下がったんちゃうやろな？」
営業マン	：	「すいません。」
上司	：	「アホかお前は！そんなんで引き下がってたら、一生売れんやろが！中古にするって言って、実際中古ほんまに買うヤツなんぞ少ないんじゃ！」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「中古にするって言われたら、まず中古を実際、具体的に見てるんかどうか聞かんかい。「まだ、見てないけど、安いし、これから見ていきます。」なんて、答えおったら、そいつ確実に逃げてるだけやからな。実際、中古を見て、汚さに落胆するヤツはめちゃ多いんや。」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「特に新築見た後はな。まだ見た事ないんやったら、すぐに見せろ。今日仲介業者に連絡して、1週間以内に鍵の手配して案内するって言え！」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「ほんなら、どうせ、「いや、そんなすぐにはいいです。」なんてぬかしおるんじゃ。全く、クズ野郎どもが。」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「大体、そいつ中古で探したいエリアやら、条件やら決まってんのか？」
営業マン	：	「いえ、それは…聞いてません。」
上司	：	「全く、客もクズやけど、お前もクズやな。中古はよっぽど条件が合わんと買わんぞ。ただでさえ、生活感出て汚いからな。このエリアだったらこの中古しかない、新築もない、中古と新築の価格差が激しい、やら。それぐらいは限られてないとな。しっかり突っ込んでいかんかい。このボケが。」
営業マン	：	「すいません。」
上司	：	「とにかく、中古を見てるんかどうかを確認して、具体的な条件を聞いていけ。んで、もし条件があるんなら、「その条件の物件ならございますよ。お調べして、すぐご案内できるように手配いたします。」と言ってみろ。それで相手の反応を見るんや。逃げてるんやなかったら、「えっ！本当ですか！それは是非見てみたい。」って食らいついてくるわ。」
営業マン	：	「分かりました。」
上司	：	「そりゃ、そうやわな。そいつの欲しい理想の物件があるって言ってるんやからな。それ言って、もし、反応がなかったり、うっ…てなったら、さっきも言ったけど、そいつは逃げるために言ってるだけや。条件すら出てこんかったら、そいつはほんまのクズや。泣かしたれ。」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「んで、どうせ中古のことも知らんやろ？色々教えてやれや。」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「まず、築2～3年ぐらいの中古は、確かにきれいや。でも、当然値段は高いんや。売る側も個人が多いから、ローン消さなアカンから、高値で出さんと抵当消せんからな。」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「んで、築5年以上たったら、建物も汚くなってくるわ。よほど妥協しているヤツでないかぎり、お得さがないと気に入らんわ。10年以上たってたら、水回りやらをキレイに直しとかんと、物好きなヤツぐらいしか買わんからな。」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「そんなモン買うヤツはアホや、ぐらいの勢いで言ってやれや。実際、俺も何回も中古案内したけど、気に入るヤツは少ないわ。買うヤツもほんまに少ないしな。「汚い」とか当たり前やっちゅうねん。汚いから安いんやろが。見てて蹴飛ばしたくなるわい。」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「んで、次は住んでからの保証や。新築なら瑕疵担保責任を10年間売主が負うやろ？中古は個人が売主の場合が多いから、瑕疵担保責任はなしでもええんや。大体、なしにして逃げ打ってくるんや。中古やから、キズやら当然あるやろ？」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「そやから、担保責任は免除できるんや。売主が業者の場合は負うけどな。それでも瑕疵を知ってから1年以内、引渡しから2年間や。新築ほどの保証はないんや。でもな、客に伝える時は、中古の売主は個人がほとんど、という認識をしっかり与えとけ。」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「業者の場合なんぞ言わんでええ。新築の時の瑕疵担保責任の話には思いっきり言うけどな。客に「中古でも業者だったら…」なんて、かすかな望みなんぞ一切持たすな。」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「もし、瑕疵担保責任の規定が中古にもあっても、それが引渡しの時点で瑕疵があったかどうかを立証せなアカンのや。もともと使い込んでて、そんなモンから断定することなんぞ難しいわい。つまり、担保責任はあってないようなモンや。」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「まあ、それは新築でも一緒やけどな。売主が戦闘態勢に入ってもうたら、厳しいわ。それは言わんでええぞ。あくまでも客には、「新築なら10年間瑕疵担保責任が付いてます。だから、万が一、欠陥があっても安心です。中古の場合は、それがないので、欠陥だったら終わりですよ。安物買いの銭失いになってしまいます。安物と言っても、何千万の買い物ですからね。」って言うんやぞ。」
営業マン	：	「分かりました。」
上司	：	「んで、中古で売主が個人でも、売主が欠陥をあらかじめ知ってた時は、瑕疵担保責任を問えるけどな。まあ、その部屋で人でも死んでたら、さすがに言わなマズいかもしれんけど、分かりにくい欠陥ぐらいやったら、そんな規定もあってないようなモンや。」
営業マン	：	「えっ、何でですか？」
上司	：	「あ？バレへんような瑕疵があるん知ってても、売主は普通言わんし、悪意であってもよっぽどのことがないかぎり売主に責任は問われへんやろが。」
営業マン	：	「そうですか？」
上司	：	「そりゃ、そうやろが。まず、欠陥を知ってるんは売主だけとしろや。それを立証するんが難しかったら、まずそいつが自分の売主に対して文句言えんやろ？せやから、売主に文句言えん以上は、自分で直すやろが。相当金かかるやろ。それか、そのままの状態で正直に買主に言うかや。んで、それを買主に言ってしまったらどうなる？」
営業マン	：	「まあ、それは理解してもらった上で…。」
上司	：	「アホかお前は？お前が買主の立場として、「この物件は欠陥住宅ですが、買って下さい。」って言われて、買うか？」
営業マン	：	「買わないですね…。」
上司	：	「誰も買わんわ。つまり、資産としての価値はゼロみたいなモンや。大損や。」
営業マン	：	「そうですね。」
上司	：	「でも、売らないと借金が返せん。だから、どうしても売りたい。しかも、欠陥は、自分が立証するのも難しいレベル。すぐにはバレへん。もし買ってから相手が欠陥に気付いても、そいつが引き渡し時点にこっちが瑕疵を知ってたことを立証せなアカン。知ってるのは自分だけ。欠陥がバレても、自分が知らんかったって言ったら、他は誰も知らん。となると、お前ならどうするんや？」
営業マン	：	「…隠して売ります。」
上司	：	「そやろが。隠すにこしたことはないやろが。買主は、今言った条件を覆さな売主に責任は問えんのや。んで、言うか言わんかで、価格に雲泥の差が出るんや。」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「そやから、中古はバレんような瑕疵があったら、知ってても隠して売るんや。んで、新築を買う度胸がなくて、目先の安さに魅かれて中古を買ったヤツは大損ぶっこくんや。分かったか！」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「んで、後のデメリットって言ったら…中古は仲介手数料がかかるんや。物件価格×3％＋6万円や。普通はな。つまり、仲介屋に払う金や。捨て金なんや。もったいないやろ？2000万円のモンやったら、66万円や。大きいやないか。」
営業マン	：	「そうですね。」
上司	：	「新築ならそんなモンあれへん。中古はそんな支払いもあるので、決してお得やないってことを叩き込め！」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「まあ、その代わり新築には修繕積立基金があるけどな。あれも大概大きいけどな。あれは中古で買ったら、いらんからな。新築の買主が払ってくれてるからな。」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「でも、それも言わんでええぞ。客は修繕積立基金についてはよう知らんヤツがほとんどや。仲介手数料は知ってるヤツが多いわ。だから、有効なんや。修繕積立基金についてはごまかせ。諸費用の説明の時にも、さらっと流せ。全体で、いくらかかりますって言って、修繕積立基金の説明は、さらっと流せ。諸費用の後の部分は、中古でも新築でもほとんど変わらんからな。」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「んで、築がたてばたつほど、修繕費も上がってくるやろ？大体、新築の長期修繕計画では、35年ぐらいまでしか計画してへんのや。その後は、知ったこっちゃないんや。修繕箇所も増えるわ、んで修繕費用も上がるわ、で負担がすぐ増えるぞ。それも脅しで使えや。」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「ほんまは、中古と今の物件で、建物の質も良くなってるはずやけどな。それを言ってしまうと、耐震偽装やらで突っ込まれるから、それはええわ。今は、原価も上がって、業者は手抜きせな辛いからな。」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「「耐震偽装があるから、一概には言えないでしょう？」なんて、反撃のスキを与えてしまうと、付け上がりおるんや。耐震偽装の問題やなく、反撃できるかどうかが問題なんや。特に逃げてるヤツにとってはな。「新築もアカンとこあるやないか。ほなサイナラ」って帰れるからな。後のこっちの説明にも説得力もなくなるし、主導権が移ってしまうと、厳しくなるからな。せやから、相手に反撃させるスキなんぞ、一切与えるな。」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「ええか、今言った比較でも、一長一短はあるんや。でも、それをうまく隠してアピールするんが営業マンの役目や。全て説明せなアカンなんて必要は一切ないからな。知らんヤツが悪いんや。俺らは、客がうまくのせられて、ここを契約すればそれでええんや。分かったか？」
営業マン	：	「はい。」
上司	：	「おう、ほんならしっかり説明してこいや。中古なんぞ全否定してやれや！「中古は、通常は、年収から考えると新築ではローンの承認がおりない方が、そんな中古のもったいなさやリスクを背負いながら、仕方なしに買うものです。お客様は、ご年収も十分にございますし、わざわざそんなものを購入する必要は一切ございませんよ。仲介業者がビックリするんじゃないですかね？」とでも言っとけ！」
営業マン	：	「はい。では、行ってきます。」
上司	：	「おう！またすぐ戻ってこいよ！」