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スタッフルーム実況中継

不動産 - Home > スタッフルーム実況中継 > 第3話
第3話 - 転勤族?

とある新築分譲マンションのモデルルームでの話である…。

モデルルームの奥に位置するスタッフルーム。ウソと説教と本音が飛び交う空間…
もちろん一般人は立ち入り「絶対」禁止。

「少々お待ち下さい。」
接客中、爽やかな笑顔の営業マンがお客様にそう一言告げ、ニコニコしながらスタッフルームへ入っていく…。

これは、あくまでも架空の業者の話であり、優良な業者も数多く存在する。「こんな業者がいたらイヤだな…」という妄想として見ていただきたい。

スタッフルーム

上司「おう、どないや?」
営業マン「はい、県外からの来場ですね。でも、まだ、この付近で買うかは未定だと言っています。」
上司「県外からこっちには何しに来たんや?」
営業マン「遊びに来たと言ってます。そのついでに寄っただけと…。」
上司「お前わざわざ県外から来て、「寄っただけ」なんぞありえへんやろが。ここはデートスポットか?」
営業マン「すいません。」
上司「んで、こっちの土地に縁はあるんか?」
営業マン「ええ。よくこっちに来ると言ってます。」
上司「何しに来るんや?」
営業マン「いえ、確認してません。」
上司「アホかお前!突っ込まんと、ここで買う理由が分からんやないか!何見て来たんや?」
営業マン「折込広告を見た、と言ってます。」
上司「お前県外に広告入れるわけないやろが。広告配布エリアちゃんと確認してんのか?」
営業マン「いえ…すいません。」
上司「このアホが!ちゃんと確認しとかんかい!「今週はこのエリアに入れるから、このエリアから住み替えるメリットを徹底的に調べたり…」とか、しとかんとアカンやろが!」
営業マン「すいません。」
上司「そいつ、ほんまに県外住んでんのか?アンケート住所、ウソちゃうやろな?」
営業マン「いえ…それは…。」
上司「まあ、折込見たっていう以上は、客もそこまでアホちゃうから、何か理由があるんやろな。そんなウソがバレるような失言は簡単にせんやろうしな。ほんなら、市内に実家でもあるんか?それも当然確認してへんのやろな。」
営業マン「はい、すいません…。」
上司「大体、お前がしっかり確認しとかんから、意図が見えへんのやろが!このクズ野郎が!」
営業マン「すいません…。」
上司「んで、何かお前、聞けた情報あるんか?」
営業マン「はい。こっちに転勤になるかもしれないと…。」
上司「いつや?立派な理由やないか。」
営業マン「それが、いつか分からないと…。」
上司「アホかお前!いつか分からんのに家なんぞ探すか!適当に言ってるだけちゃうんか!もっと疑わんかい!」
営業マン「はい。」
上司勤務先はどこや?」
営業マン「いえ、聞いたんですが、「まあまあ…」と濁されました。」
上司「どんな聞き方したんや?」
営業マン「いえ、普通に…。「どちらでお勤めされてらっしゃるんですか?」と…。」
上司「アホかお前!勤務先みたいな個人情報、普通に聞いたら客嫌がるやろが!お前も現場がコロコロ変わる転勤族やろが。同じ人種やいうことで会話弾ませて、自分の身の上話ぶちまけながら、さらっと聞いたらまだ言いおるかもしれんやろが。工夫せんか!」
営業マン「はい。」
上司「大手やったら、工場やら職場調べて、社宅とかも住宅地図で分かるし、希望のエリアとかもこっちで探れるんやけどな。今まで何年周期ぐらいで転勤してるんや?」
営業マン「5年周期ぐらいらしいです。」
上司「ほんで、県外で今何年目や?」
営業マン「いえ、確認していません。」
上司「このクズ野郎が!それで大体の時期分かるやろが!お前何考えてるんや!」
営業マン「すいません。」
上司「第一、そいつも周期分かってるんやったら、いつぐらいになるか大体分かるやろが。適当に言ってるだけやろが。もっと突っ込んでいかんかい!」
営業マン「すいません。」
上司「んで、そいつ家は買ったことあるんか?」
営業マン「いえ、それは確認してません。」
上司「聞いとかんかい!」
営業マン「すいません。でも、賃貸マンションを転々としてると…。」
上司「当たり前やろが!各地でいちいち家なんぞ買ってられるか!どこかで1件持ってるかもしれんやろ。まあ、1回でも買ったことあるんなら、「買ったことあるんですけど、失敗したから…」やら「持ってますから…」やら言ってきて、あらかじめ逃げうってくるけどな。言ってこん以上は、こっちから聞かんと分からんやろが!」
営業マン「すいません。」
上司「んで、転々としてるって、どこを転々としてるんやそいつ?」
営業マン「いえ、それは聞いてません。」
上司「アホかお前!全国クラスでまわってんのか、近くの県だけの転勤かで、ある程度大手かどうかも分かるやろが!」
営業マン「すいません。」
上司「んで、全国クラスやったら、「すごいですね」とか「うらやましい」とか、おだてれるから、どこで働いてるんかも聞きやすくなるかもしれんやろが!」
営業マン「すいません。」
上司「お前、あやまってばかりやないか。俺の言ってる事理解してんのか?」
営業マン「はい。理解してます。」
上司「ほんまか?俺の言う事、メモも取ってへんけど。」
営業マン「あっ、すいません。」
上司「このクズが。そんなアホみたいな接客ばっかしとるから、お前客にナメられとるんとちゃうんか?」
営業マン「いえ、でも…「しっかりした方ですね」って誉めていただきました。」
上司「お前、おだてられとるだけやろが!そんな下らん会話に耳貸す必要なんぞないんや!客はな、こっちにええ事言うときは、絶対裏があるんや!県外やし、なんかそいつ怪しいな。そいつ業者の可能性はないか?」
営業マン「いえ、それは分かりませんが…。」
上司「こっちの販売状況とか気にしてへんか?」
営業マン「いえ、まだそういう話にはなってません。」
上司「そうか。ほんならええけど、お前、簡単に販売状況教えんなよ。早めに見せてしまったら、いざという時に応用きかんからな。」
営業マン「はい。」
上司「今、残り10戸いうことにしてるけど、ほんまは20戸残ってるからな。相手の希望の部屋聞いてから、ベストな部屋空けなアカンからな。」
営業マン「はい。」
上司「んで、売りやすい部屋は売るなよ。最後苦しくなるからな。後々残りそうな部屋から売っていかなアカンから、とりあえずそいつ、条件悪いクソ安い部屋で話ししてみたらどないや?漠然としてるアホみたいなヤツは、案外安い価格に飛びつきおるぞ。」
営業マン「ええ。しかし、部屋は今は4Lで話していますが…。」
上司「あん?何でやねん?」
営業マン「パンフレットで話してて、一番いい部屋だということで…。」
上司「当たり前やろが!何相手の理想に付き合ってやってんねん!一番広いタイプやろが!ええのは当たり前やろ!何人家族や?」
営業マン「3人です。」
上司年収は?」
営業マン「いえ、まだ確認していません。」
上司「何考えてんのやお前!3人やったら4Lいらんやろが!2Lで十分やろが。そんな漠然としたヤツには価格で興味そそらさんとアカンやろが!客の言うとおり、ほんまに転勤未定なんやったら、金額高くて買うわけないやろが!もし年収低かったらどうすんねん!第一、4L必要な理由聞けてんのか?」
営業マン「いえ…すいません。」
上司「このクズ野郎が!とにかく、2L勧めろや。4Lは角部屋やろ?普通、マンションは角部屋に利益乗っけるんや。角部屋がいいとか、向きも気にせんと平気で言うアホに人気があるからな。だから、割高やから、中部屋の方が割安やて方向に持っていけ。南向いてたら中部屋でも十分、日光入るやろが。日影図見せてアピールしろや。」
営業マン「今から変えれるでしょうか?」
上司「アホかお前!それを変えるんがお前の仕事やろが!客の理想の部屋売るんは猿でもできるんや!」
営業マン「すいません。」
上司「転勤族なんやから、ここで買ってもまた転勤してどっか行く可能性あるやろが。単身赴任で夫婦納得するんやったら問題ないけど、売るか貸すかせなアカンやろ。資産価値で納得させろ!「マンションは売ったり貸したりするときは中部屋の方が応用きくんです。角部屋は割高で、どうしても価格の落差は中部屋に比べて大きくなります。借りる側は、安さで選ぶ方が比率は高いんで、価格設定が安くても利益出る中部屋の方がお得ですよ。ここなら立地がいいので特に安心です。」とか言っといたらいいやろが。」
営業マン「分かりました。」
上司「どうせ、売ったり貸したりする時になったら俺らはここからオサラバしとるんや。実際こいつらがどうなっても知ったこっちゃないからな。」
営業マン「はい。」
上司「分譲賃貸の相場表見せながら話しするんやぞ。口で言っても納得せんからな。客のために将来のことまでちゃんと考えてやってるんやぞ、て、さりげなくアピールして、「賃貸相場と中部屋の月支払額と比較して、どれだけローンのリスク減らせるか、具体的に一緒に考えましょう、お客様のために」てうまい事言って資金計算まで持って行け!」
営業マン「分かりました。」
上司「資金計算まで持っていけたら上等や、個人情報聞きまくって、支払いクソ安くして落とし込め!」
営業マン「はい。」
上司「ほんなら、行ってこい!実家やら、もっと詳しい動機聞き出すことも忘れんなよ!自分の身の上話して、「私の実家は〜なんですけど、しゃべり方が独特なんですぐ皆さんに見破られるんですよ。お客様あんまり方便出ないですよね。うらやましいですよ。ちなみにご実家どちらなんですか?」とか少しでも話しやすい方向に持っていくように工夫するんやぞ!」
営業マン「分かりました。では、行ってきます。」
上司「んで、立地のアピールもできてへんやろ?そいつ今こっちに住んでるわけやないんやから、食らい付くモン見つかるまで、色々話し変えてアピールしながら探っていけ!」
営業マン「分かりました。」
上司「何かええ情報聞き出せたら、そのつど絶対戻って来いよ!」
営業マン「はい。」

そして、笑顔でスタッフルームから営業マンが出てくる…。


何事もなかったかのように、客の目の前に座り、自分の身の上話に花を咲かせる…。
爽やかな笑顔で、世間話をしながら、重要な情報を聞き出すタイミングを狼のように狙いながら…。

これは、あくまでも架空の話であり、本当にこんな状況なのかは、想像にお任せします。



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