スタッフルーム実況中継
とある新築分譲マンションのモデルルームでの話である…。
モデルルームの奥に位置するスタッフルーム。ウソと説教と本音が飛び交う空間…もちろん一般人は立ち入り「絶対」禁止。
「少々お待ち下さい。」
接客中、爽やかな笑顔の営業マンがお客様にそう一言告げ、ニコニコしながらスタッフルームへ入っていく…。
これは、あくまでも架空の業者の話であり、優良な業者も数多く存在する。「こんな業者がいたらイヤだな…」という妄想として見ていただきたい。
(前回の続き・スタッフルーム実況中継<17> - ランニングコスト1から)
スタッフルーム |
上司 | : | 「おう、申込入ったか?」 |
営業マン | : | 「いえ、さきほどのランニングコストですが…。」 |
上司 | : | 「あん?またか。まだギャーギャー言ってんのか?そいつ。」 |
営業マン | : | 「はい、どうやら、車2台持っているので、2台分の駐車場代がもったいないと…。」 |
上司 | : | 「ちっ、うっとうしいヤツやな。ここは近隣駐車場が高いからな。2万円ぐらいか。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「それを言われるとちょっと辛いな。大体、ここは駅が近いやろ?何で2台もいるんや?」 |
営業マン | : | 「ええ、今不便なところに住んでて、2台持っているからと…。」 |
上司 | : | 「だから何で「ここで」2台いるんかって聞いてんやろが!日本語分からんのか?お前は。」 |
営業マン | : | 「すいません、せっかく2台持っているんで、そのまま使いたいのかと…。」 |
上司 | : | 「ちゃんと聞いたんか?」 |
営業マン | : | 「いえ…。」 |
上司 | : | 「やっぱりな。お前が濁す時は、大体、聞けてへん時やからな。聞けてへんのやったら、聞けてへんって正直に言わんかい!せっかく人が親切にアドバイスしてやってんのによ。優しく教える気無くすやないか。ビシバシいってやろうか?」 |
営業マン | : | 「いえ…すいません。」 |
上司 | : | 「何ビビっとんねん。俺が下っ端の頃は、こんな優しく接してもらえんかったぞ。まあ、厳しく教育受けたからこそ、今の俺があるんや。大体、不動産営業は、ビシバシいくのが普通なんやろが。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「まあ、ええわ。んで、そいつの話やな。車2台持ってるヤツは、マンションなかなか買わんからな。どうしても近隣駐車場だけは、ムダ金やからな。でも、そもそもマンションのメリットは、車いらずの生活ができることってのもあるからな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「まず、そんな事をぬかす段階で、そいつはここでの生活がイメージできてへんのや。あくまでも今の不便な生活ベースで考えとんのやろ。せやから、ここの便利さをアピールしろ。」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「んで、車1台売らす方向で話せな厳しいわ。まず、車を、普段誰が何のために使っているかや。」 |
営業マン | : | 「はい、今住んでいる家は駅が遠いので、車で通勤しなければいけないと…。そして、その間、奥さんがスーパーまで買い物に車を使って行っていると…。」 |
上司 | : | 「まあ、典型的なパターンやな。大体、そんな不便なところに何で住んでるんや?それが不満なんか?」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「主人は、車よりも電車通勤の方がいいのか?」 |
営業マン | : | 「いえ、車の方が楽と…。」 |
上司 | : | 「それは電車通勤したことがないからちゃうんか?イメージがわかんからちゃうんか?」 |
営業マン | : | 「そうかもしれませんが…。」 |
上司 | : | 「だからお前の推測なんぞいらんのじゃ!何回言わすんやお前は!ちゃんとそいつに突っ込まんかい!このボケが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「ほんなら、もしそうなんやったら、1回お前が朝イチに家まで迎えに行って、駅まで送って、電車で通勤させてみろや。1回やってみんとイメージわかんやろ。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「大体、車やったら、混むやろ?車で通勤に何分かかってるんや?」 |
営業マン | : | 「1時間です。」 |
上司 | : | 「んで、もしここ買って、電車で通勤したらどれぐらいになるんや?」 |
営業マン | : | 「いえ、それは分かりません。」 |
上司 | : | 「アホかお前は!そいつアンケートに勤務先書いてるやろが!調べんかい!ここは、駅近がウリなんやから、電車で通勤ささな意味ないやろが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「全く…、勤務先を書いてたら、速攻で職場のこと全て調べんと、話の主導権握られへんし、アピールもできへんやろが。アンケートにそんな個人情報書いてて、のほほんってしているヤツはチャンスなんやぞ!相手がのほほんってしているうちに、こっちで調べまくって、こっちが知らんふりして、さりげなくアピールできるからな。どんなアバウトな情報からでも、徹底的に探っていかなアカンやろが!それが営業マンの役目やろが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「相手の情報をそのまま聞くだけで、漠然とアピールして売るのなんぞは猿にでもできるんや!」 |
営業マン | : | 「すいません。で、今調べましたが、ここからなら、電車で勤務先の最寄り駅まで30分で行けます。」 |
上司 | : | 「んで?職場まで歩いていくとして、何分ぐらいや?住宅地図で調べんかい。」 |
営業マン | : | 「はい、大体、この距離なら、歩いて10分ぐらいですね。」 |
上司 | : | 「ほんなら40分で行けるやろが。そっちの方が楽やろが!朝の20分は大きいぞ!朝なら、電車の本数も多いから、待たんでええやろ。」 |
営業マン | : | 「そうですね。」 |
上司 | : | 「そうですねって…お前、普通は、これは接客行く前に速攻で把握しとかなアカンことやぞ。んで、この話になった瞬間に先手を打っとかなアカンのや。そんなことも分かってへんから、そんなヤツの下らん反撃食らってこっちにすごすごと帰ってくるんやろが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「その通勤時間の短縮をアピールしろ。でも、車に慣れてるんやから、すぐには納得せんやろ。せやから、お前が1回それを実行させてやるんや。実際、やってみんと客は理解せんからな。口で言って信用するヤツなんぞおらんのや。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、それを言ってみて、ええ反応せんかったら、どうせ「歩くの面倒くさいし…」とか、腐ったヤツの吐くセリフが出てくるからな。最近のヤツは、不健康やからな。」 |
営業マン | : | 「そうですね。」 |
上司 | : | 「またかい。そうですねって…お前毎日車やないか。」 |
営業マン | : | 「ええ、まあ…。」 |
上司 | : | 「お前、俺の話ちゃんと理解してんのか?客のアホなエキス注入して、お前もイカれたんちゃうやろな?」 |
営業マン | : | 「いや、それは大丈夫です。」 |
上司 | : | 「大丈夫やったらちゃんとアピールできてるやろが。」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「お前も不健康なんやったら、明日の朝まで訪問営業出ててもええんやぞ。」 |
営業マン | : | 「いえ、それは…。」 |
上司 | : | 「まあ、とにかく、客がそんな面倒くさそうな気配見せてきたら、お前の身の上話でもしろや。「私も不便なところからマンションに買い替えましたが、駅が非常に近いので、毎日歩くようになりました。朝に家を出るまでの時間も、家族での団欒に使えるようになりましたし、有意義に過ごせるようになりました。今までは、寝不足で、朝に車で事故に遭いそうになることもありましたが、電車なら、そんな心配もないですし、どうしても眠たければ電車の中で寝ますしね。」ってな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、「これまでは、朝に新聞を読む時間もなく、車の中ではもちろん読めませんでしたが、電車の中で、新聞も読めますし、本も読めますしね。電車通勤は時間を本当に有効活用できますよ。これが駅近のマンションのメリットですよ。そんな生活、いかがですか?」って切り出していけや。そんな作り話でも、ちょっとでも乗ってきたら、やった甲斐があるっちゅうモンや。」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「家族で少しでも顔を合わす時間ができるってのはええモンや。って話しを振ることで、主人が「そんなんいらん」とは言いにくくなるからな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「それでも面倒くさいから車がいいって言ったら、そいつはクズや。そんなヤツに足は不要や。足の骨、粉々に砕いてやれや。この金属バット貸したるわ。」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「それが実現すれば、車が常に2台家に残ることになるやろが。嫁の買い物に主人の車使ったらええんや。」 |
営業マン | : | 「そうですね。」 |
上司 | : | 「んで、そもそも、車の維持費に関しては、そいつ考えたことあんのか?」 |
営業マン | : | 「いえ、それは…。」 |
上司 | : | 「突っ込んでいかんかい!お前、何も考えてへんのか?車の駐車場代がもったいないて思うんやったら、車の維持費はどうやねん?」 |
営業マン | : | 「けっこうかかりますよね。」 |
上司 | : | 「おう。実際、車の維持費がもったいないからって、車を処分して、車が必要な時にタクシー呼んで済ませるヤツもおるからな。しっかりしとるわ。実際、コスト計算したら、タクシー使った方が安く済んでるらしいからな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「まあ、日本人は車に愛着持ってるヤツが多いからな。部屋みたいにオシャレしてるやろ?俺からしたら、見てて気持ち悪いだけやけどな。でも、車2台から1台には抵抗は少しは薄まるはずや。それを理解させるために、1つ1つ実践してみせなアカンな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「車の維持費を全部計算して提示してやれや。ガソリン、税金、メンテナンス、車検やら全部ひっくるめてな。んで、もったいなさをアピールしていけ!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、戸建なら駐車場代はかからんけどな、車2台分のスペースもけっこうとるやろ?その土地分の税金もかかるわけやろ。決してタダではないことを理解させろ!」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「ええか、絶対に口での説明で終わらすなよ!客はアホやねんから、すぐ忘れおるからな!資料を見せながら、紙に書いて、それをコピーして原本を渡すんや。額縁に入れて渡してやってもええぐらいや。すぐには捨てへんやろ。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、そいつには、まず駅を利用するメリットをこんこんと説け。んで、電車で1回通勤させろ。んで、嫁にここから買い物施設までの道案内も兼ねて、スーパーまで一緒に歩いていけ。んで、車の維持費を紙に書いて、分かるまで説明するんや!「こんな便利なところで、車2台持つ人はバカです」ぐらいの勢いで言ってやるんや!分かったか!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「とにかく話はそれからや。とことん戸建のランニングコストのメリットを否定してやれ!」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「んで、今乗ってる車の車種も聞いておけよ。んで、車の残債もな。売ってどれぐらいになるか、それも分かってて損はないからな。んで、その金もここの手付金に放り込ますんや!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「まあ、今日もどうせ車で来てるんやろ?歩きで来てたら、電車通勤も脈ありやけどな。乗ってきてる車調べとけ。んで、アンケートに住所書いてるやろ?お前、今日そいつの家行って2台目の車も見て来い。んで、もちろん、その家の最寄のスーパーやらも確認してこいよ。どれぐらい距離かかるんか、どんな道なんか、品揃えはどうかもな!」 |
営業マン | : | 「分かりました。では、行ってきます!」 |
上司 | : | 「おう!またすぐ戻ってこいよ!」 |
そして、スタッフルームから営業マンが出てくる…。
そして何事もなかったかのように、客の前に座り、車のランニングコストとは?について語り、自分の身の上話を語る…もちろんウソ…。
これは、あくまでも架空の話であり、本当にこんな状況なのかは、想像にお任せします。
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