スタッフルーム実況中継
とある新築分譲マンションのモデルルームでの話である…。
モデルルームの奥に位置するスタッフルーム。ウソと説教と本音が飛び交う空間…もちろん一般人は立ち入り「絶対」禁止。
「少々お待ち下さい。」
接客中、爽やかな笑顔の営業マンがお客様にそう一言告げ、ニコニコしながらスタッフルームへ入っていく…。
これは、あくまでも架空の業者の話であり、優良な業者も数多く存在する。「こんな業者がいたらイヤだな…」という妄想として見ていただきたい。
スタッフルーム |
上司 | : | 「おう、どないや?」 |
営業マン | : | 「はい、分譲賃貸からの来場です。」 |
上司 | : | 「おっ!熱いやないか!んで?検討動機は?」 |
営業マン | : | 「ええ、アンケートでは持家希望となってます。」 |
上司 | : | 「だから検討動機はって聞いてるんやろが。持家は誰だって希望するわい。」 |
営業マン | : | 「ええ…それが、最近の新築マンションはどうなっているのか知りたいとの理由で…。」 |
上司 | : | 「何じゃそりゃ?今住んでるのは築何年やねん?」 |
営業マン | : | 「はい、築20年です。」 |
上司 | : | 「リフォームはされとんのか?」 |
営業マン | : | 「いや、昔のままと言ってます。バリアフリーじゃないし、設備は今イチで、住み心地はあまり良くないと言ってました。」 |
上司 | : | 「ほんなら何で住んでんねん?突っ込んだか?」 |
営業マン | : | 「いえ、それは…。」 |
上司 | : | 「アホかお前は!それ聞かんと目的が見えてこんやろが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「何かそいつにとってメリットがあるから住んでるんやろが。だから、家買うのに何を重視するかも見えてくるんやろが。お前がそれ聞かんと、何も分からんやろが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「新築マンションを見てみたいって言ってたけどな、ただ見るだけなんてヤツはおらんのじゃ。欲しいから来るんやろが。」 |
営業マン | : | 「はい。しかし、昔分譲マンションを買ったことがあって、住み替えに苦労したと言ってまして、「マンションを買うのはちょっと…」と言ってます。」 |
上司 | : | 「何やそいつ?言ってる事めちゃくちゃやないか。買わんのに、見たいって偉そうに。デパートのウィンドウショッピングとちゃうねんぞ。モデルルームはな、建設するのに何千万もかけてるんや。そんなやつに見せるのもったいないわい。」 |
営業マン | : | 「そうですね。」 |
上司 | : | 「んで?マンションはちょっと…て言うことは、戸建は考えてるんか?」 |
営業マン | : | 「ええ、戸建に住んだことないので、憧れは持ってます。」 |
上司 | : | 「ほんなら戸建見に行ったらええやろが。突っ込んだか?」 |
営業マン | : | 「はい、今後戸建も見ていくと…。」 |
上司 | : | 「戸建見たことはあるんか?」 |
営業マン | : | 「いえ、ないです。」 |
上司 | : | 「何で先にマンションを見に来たんや?」 |
営業マン | : | 「いえ、それは…。」 |
上司 | : | 「突っ込まんかい!そいつ逃げてるだけやろが!「マンションよりも戸建とお考えなら、私がお客様の状況でしたら、先に戸建を見ますが、マンションを先にご覧になられる、事情はあるんでしょうか?」って普通に聞いていったらええやろが!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「えっ!?ってビックリしたように聞くんや!客に、お前はアホみたいな寝言言ってるんやっていう事をしっかりと教えたらんかい!もちろん、失礼のないようにな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、そいつ、前買ったマンション、住み替えにどう苦労したんや?」 |
営業マン | : | 「はい、当時、転勤が決まって、貸すことは考えてなかったので、売ろうとしたんですが、相場がかなり下がってて、売れず、ローンが消せなかったと…。」 |
上司 | : | 「ふ〜ん。どこで買ったんや?」 |
営業マン | : | 「〜町です。」 |
上司 | : | 「一等地やないか!やるなあ、そいつ。」 |
営業マン | : | 「はい、しかし、マンションは資産価値が高いと営業マンに吹き込まれて買ったものの、買って5、6年ぐらいなのに、値下がりがすごく、失敗したので、マンションを買うのに、いいイメージがないと…。」 |
上司 | : | 「そうか、んでいつ買ったんや?」 |
営業マン | : | 「いえ、そこまでは聞いてません。」 |
上司 | : | 「アホかお前は!そこ大事やろが!せっかく身の上話をポロポロ言ってるんやから、聞けるときに聞いとかんかい!聞き込みは、タイミングが命なんやぞ!前にも言ったやろが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「大体、お前それ言われて何て答えたんや?」 |
営業マン | : | 「まあ、マンションは常に、必ず値が下がらないものではありませんから…と…。」 |
上司 | : | 「アホか!そんなん言ってもうたら、マンションのウリを1つ自分でぶっ潰してるようなモンやろが!「いや、ここは大丈夫」ぐらいの気合いで行かんかい!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「まあ、実際に失敗を体験してるんやったら、あんま信用せんやろうけどな。しかも、「営業マンにだまされた」的な言い方しとるしな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「お前が聞けてへんから、想像するしかないやないか。このクズ野郎が。そいつ歳は?」 |
営業マン | : | 「45歳です。」 |
上司 | : | 「今賃貸に何年住んでんねん?」 |
営業マン | : | 「13年です。」 |
上司 | : | 「ほんなら、多分、売ってから今のところに住んでるねんな。そう考えたら、そいつバブルの時に買ってるやないか。」 |
営業マン | : | 「そうですね。」 |
上司 | : | 「そうですね。って…お前、それがどういう事か、分かってんのか?」 |
営業マン | : | 「えっ?バブルだなあと…。」 |
上司 | : | 「お前、バブルの時に買って、バブル崩壊してから売ったら、そりゃ値下がりするやろが。いくらマンションの資産価値が高かろうが、全体的に土地値が暴落したら、下がるわい。何を、マンションと営業マンのせいにしとんねん。経済の行く末を見抜けんかったそいつが悪いんやろが。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「それぐらい、さっと気付かんか!アホが!分かってたら、そういう話もできるやろが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「お前、客の寝言に付き合って、逃げの先手打ちまくられとるやないか。そんなんで決めれるほど、この物件は楽ちゃうねんぞ!分かってんのか!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「とにかく、戸建のデメリットを言いまくれ!そいつマンションはイヤやって言ってたけど、ほんまにイヤなんやったら分譲賃貸なんぞ住まんやろ。借家に住みおるわ。「マンションにお住まいされてたのなら、ご存知だとは思いますけど、〜のメリットがございますよね。」て話を振っていって、「ああ、それは住んでた時にいいなと思った。」って言われることがあったら、そこを徹底的に突いていって話を膨らませろ!」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「んで、そいつ家賃は?高いやろ?」 |
営業マン | : | 「12万円です。」 |
上司 | : | 「高いな!10年以上住んでて、その値段や。そいつの言ってるように、資産価値がどんどん下がりまくるんやったら、普通そんな値段つかんやろ。それを理解させていけ!んで、今まで払ってきた家賃の合計を提示して、もったいなさをアピールしろ!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、バブルを経験してるんやったら、今の低金利が魅力的なはずや。今の支払い額も提示して説明しろよ!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「1回家買ったことあるやつなら、思い切りもつくはずや。何やかんや言って、気に入ったら即決するんや!買ったことなかったら、「踏ん切りがつかない」とかぬかしおるけどな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「しかし、俺らも、マンションは高値で貸せますってアピールするけど、分譲賃貸なんかによう住みおるな。団地で十分やけどな。団地なんかに住めるか!っていう下らんプライドが強いんやろうな。もったいない。アホやな。」 |
営業マン | : | 「そうですね。」 |
上司 | : | 「それで、貯金ないとか言い出したら笑うぞ。」 |
営業マン | : | 「それが、ほとんどないって言ってます。」 |
上司 | : | 「アホやないか、そいつ。金の使い方間違ってんちゃうんか?FP呼んで資産設計のやり方教えてもらうように勧めてみろや。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「「ウチの営業マンじゃない、第3者に教えてもらえるから、客観的ないい意見もらえますよ。」ってな。んで、ウチと提携してる専門家を呼んでやれや。関係ない第3者やと思わせて、客を言いくるめてもらうんや。」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「おう、FPに乗ってきたら、日程は少し後に設定しろよ。専門家と口裏合わせなアカンからな。」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「おう、ほんなら、今言った説明して、客の逃げ道を早めに塞げ。客の言ってることも矛盾してるんやから、突っ込んでいったら、ボロ出しおるからな。んで、FPのアポイント切ってこい。」 |
営業マン | : | 「はい。では、行ってきます。」 |
上司 | : | 「おう!また戻ってこいよ!」 |
そして、笑顔でスタッフルームから営業マンが出てくる…。
何事もなかったかのように、客の目の前に座り、昔の体験談で花を咲かせる…。
爽やかな笑顔で、世間話をしながら、逃げの先手に対して、反撃を食らわせるスキを狙いながら…。
これは、あくまでも架空の話であり、本当にこんな状況なのかは、想像にお任せします。
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