スタッフルーム実況中継
とある新築分譲マンションのモデルルームでの話である…。
モデルルームの奥に位置するスタッフルーム。ウソと説教と本音が飛び交う空間…もちろん一般人は立ち入り「絶対」禁止。
「少々お待ち下さい。」
接客中、爽やかな笑顔の営業マンがお客様にそう一言告げ、ニコニコしながらスタッフルームへ入っていく…。
これは、あくまでも架空の業者の話であり、優良な業者も数多く存在する。「こんな業者がいたらイヤだな…」という妄想として見ていただきたい。
スタッフルーム |
上司 | : | 「おう、どないや?」 |
営業マン | : | 「はい、奥さんだけの来場です。主人は忙しくて来てないです。」 |
上司 | : | 「んで?」 |
営業マン | : | 「奥さんは、あまり家買うのに、乗り気じゃないみたいです。」 |
上司 | : | 「ほんなら、何で来たんや?」 |
営業マン | : | 「主人に頼まれて見に来たと…。」 |
上司 | : | 「主人は興味あるんか?」 |
営業マン | : | 「ええ、そうみたいです。」 |
上司 | : | 「お前、ちゃんと聞いてんのか?」 |
営業マン | : | 「はい、主人は住宅購入に意欲を示していると奥さんが言ってるんで…。」 |
上司 | : | 「主人はマンションがええんか?戸建か?」 |
営業マン | : | 「はい、マンションしか見てないらしいんで…。」 |
上司 | : | 「だからどっちやねん!それだけじゃ分からんやろが!相変わらず漠然とした言い方ばっかりしやがって!このクズ野郎が!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「客は漠然とした言い方しかできんのや。考えてモノしゃべらんアホが多いからな。だから、言い逃れしても、簡単に墓穴堀りおるんや。ほんまにマンションしか見てないんか?」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、マンションは何件見てるんや?」 |
営業マン | : | 「2件です。」 |
上司 | : | 「どこや?」 |
営業マン | : | 「昔にA町のマンション(一等地、高い)、B町のマンション(安いが不便、駅遠い)です。」 |
上司 | : | 「何でマンションしか見てないねん?」 |
営業マン | : | 「マンションの方が便利だから、と…。」 |
上司 | : | 「何がどう便利やねん?」 |
営業マン | : | 「駅が近いからと…。」 |
上司 | : | 「それは主人の意見か?」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「嫁は?」 |
営業マン | : | 「奥さんは、特にこだわりはないって言ってます。」 |
上司 | : | 「どっちが権力強いねん?」 |
営業マン | : | 「主人の方が強いらしいです。」 |
上司 | : | 「主人は何で駅が近い方がええねん?」 |
営業マン | : | 「電車で通勤するからです。」 |
上司 | : | 「ほんなら、何で駅に遠いB町のマンション見に行ったんや?」 |
営業マン | : | 「安かったからです。」 |
上司 | : | 「価格と、駅近どっちを優先するんや?」 |
営業マン | : | 「いえ、さすがにそこまでは…。」 |
上司 | : | 「アホかお前は!そこ大事やろが!駅近で安いところなんかないやろが。どっちか妥協せなアカンやろが!そんな夢見てても一生買えんやろが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「何が「さすがにそこまでは…」じゃ。いくら聞いても、肝心なところ聞けてへんかったら何も聞けてへんのと一緒じゃ!勘違いしやがって、このボケが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「嫁、こだわりはないとかぬかしながら、価格重視しとんちゃうんか?基本的に、来場した本人は、自分の意向を悟られたくないから、来てない人を話の主人公にして、自分は逃げおるんや。実は嫁が探してるんちゃうんか?」 |
営業マン | : | 「いえ、それは…。」 |
上司 | : | 「もっと疑っていかんかい!嫁の意向をもっと突っ込んでいくんや!「例えば、お住まい買われるとしたら、奥様なら場所か、価格か、どちらをご希望されますか?」って聞いていったらいいやろが!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、今まで見に行ったマンションは、夫婦で見たことがあるんか?」 |
営業マン | : | 「いえ、それは…。」 |
上司 | : | 「アホかお前は!主人がもし見に行ったことないんやったら、ただのイメージだけで話しとるだけかもしれんやろが!部屋見て、「マンションてこんなものだったのか」なんてぬかしおったら、意味ないやろが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「全く、お前、何も聞けてへんやないか。情けない。」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「嫁の意向も分からずか…。まあ、大体、嫁が重視するんは金や。女は特に金にシビアやからな。低金利での支払いの安さをアピールしていけや。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、そいつ、マンションの方がいいって言ってるけど、戸建もあるかもしれんやろ?大体、マンションを買うやつは、嫁がマンション希望して決まるパターンが多いんや。マンションのメリットは利便性や。今言ってた駅近やらの利便性もあるけど、戸建と違ってマンションは維持管理が楽やからな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「主人は仕事で1日家空けるけど、嫁は家でゴロゴロしおるからな。セキュリティもよくて、管理も楽にこした事はないからな。それを、「マンションを購入する人の理由ランキング」やらをデータで示して、アピールしていけ!」 |
営業マン | : | 「はい。ただ…奥さんが、その金の話で、頭金を貯めてから…と言ってるんですが。」 |
上司 | : | 「そいつの自己資金は?」 |
営業マン | : | 「100万です。」 |
上司 | : | 「んで、いくら貯めるつもりなんや?」 |
営業マン | : | 「それは聞いたんですが、できるだけ多くと…。」 |
上司 | : | 「アホか!そんなん逃げてるだけやろが!具体的に「いくら」を「いつまで」に貯めるってよう言わんやつは、今買うんが怖いからじゃ!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「大体、100万しか自己資金ないんやろ?今まで、よう貯金もできんかったやつが、これから貯金なんかできるわけないやろが!夢見てても、現実は厳しいんじゃ!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「全く、貯金もできんやつに限ってそんな事ぬかしてくるんや。「今はムリやけど、いつかは…」てな。アホちゃうんか。そんなん俺でも言えるわい。俺もいつかは貯金1000万!てな。まあ…今はブラックやけどな。そんなことどうでもええんや!」 |
営業マン | : | 「そうなんですか?」 |
上司 | : | 「ほっとけ!不動産やってるやつはけっこう多いんじゃ。金使い荒いヤツが多いからな。借金して酒飲みに行くしな。金は使うためにあるんじゃ!不動産屋の給料は酒と風俗のためにあるんや。そのために必死こいて稼ぐんやろが!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「まあ、そんな話はどうでもええんや。とにかく、頭金なんか貯めるのはムリやし、貯めてもムダや。3000万の物件買うとして、金利が1%上がったら返済総額いくら上がるんや?」 |
営業マン | : | 「600万以上です。」 |
上司 | : | 「そやろが!何年も頑張って貯金して、さあ買おかって思って時に、金利が上がってたら、そんな貯金一瞬で吹っ飛ぶんや。知らんヤツが多いからな。だから平気で「頭金が…」とかぬかしおるんやろが。俺らからしたら、アホとしか思えんわ。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「昔は、頭金が2割必要とか言ってたけど、今は銀行ローンはもちろん100%ローンいけるし、諸費用ローンもできるから、金ゼロでもローン組めるやろ。んで、フラットでさえも、保証型使える銀行やったら頭金ゼロでいけるやろが。今は住宅を買いやすい時代になってるんや。今買わんと損なんや!ってことをたたき込め!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「まあ、あくまでも金利が上がったらの話やからな。金利は上がるんやってことを上手く納得させんとアカンからな!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「まず、最もらしい例を挙げてみろ。「2年ぐらい前に3年固定金利で3000万のお住まいの購入をご検討されてた方がいらっしゃいました。当時、3年固定金利は当初優遇で1%でした。35年ローンで、利息も含めたトータルの返済額、つまり返済総額は3556万でした。しかし、その方もやっぱり頭金を貯めて、少しでも返済総額を減らしたいからとの理由で購入を見送られました。」てな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、「そして、その方は、2年間で、辛い節約をして、400万円貯めました。月16万円以上の貯金です。すごいですよね。で、つい最近、別のウチが販売している物件にお越しいただき、同じ3000万円のお部屋を、頭金400万で、同じ3年固定金利でご検討されました。今の3年固定金利は、優遇つけて2%です。」と。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、「金利が少し上がってますけど、2年前と違い、ローンは2600万円で済みます。返済総額も少しは減らせるだろうと思いますよね?しかし、返済総額は…。」いくらや?」 |
営業マン | : | 「3617万円です。」 |
上司 | : | 「そやろが!「血のにじむような努力をしてお金を貯めて、いざ買おうとしたその方は、頭金全額入れて、返済総額は、2年前よりも増えたんです。つまり、その400万円は、ムダな貯金となってしまったのです。」ってな感じで、頭金貯めるんはムダやってことを、こんこんと説け!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「「実際に、こうやって後悔された方もいらっしゃいます。私どもは、金利でのこういった失敗例を数多く見てきています。失敗された方の大半が、低金利のお得さをしっかりと理解されず、頭金を貯めようとされて、貯金がパーになるケースです。失礼な言い方にはなってしまって申し訳ございませんが、私は、プロの立場として、お客様が、将来、大切なお金をムダにしてしまうのを止めたいのです。後々、後悔することのないようにご提案させていただいているのです。」とでも言ってみろや。そいつが将来どうなろうが、知ったこっちゃないけどな。客の事を考えてるんやって思わせることが大事なんや!」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「まあ、当時はゼロ金利解除の時期やったから金利が多少上がるのは当然や。んで、米国と日本の金利差がかなりあって、それを利用して、日本円を借りて、外貨で投資するキャリートレードが問題になってたやろ?だから、日本の金利上昇の圧力もあったからな。日銀も金利上げたがってたしな。そんな時に短期固定を組もうってのがそもそも間違いなんやけどな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「まあ、さすがに、俺も金利は上がると思ってたけどな。でも、当時に接客した、どこぞの大手証券のヤツが、「金利は当分大幅上昇することはない」と否定しやがってな。その何ヶ月か後にサブプライム問題で景気低迷や。証券屋の連中、事前に知ってたんとちゃうんかい。」 |
営業マン | : | 「そうですね。」 |
上司 | : | 「まあ、それは分からんけどな。俺に主導権握らさんために、適当に言ってただけかもしれんからな。でも、まあ、サブプライムを利用して、稼いだところもあるぐらいや。景気の先行きを見るのは大事やのぉ。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「まあ、それは余談やな。ほんなら、まず、頭金を貯めてからって考えを改めさせろよ!」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「んで、嫁に団信(団体信用生命保険)の話をしろ。「ローンを組まれますと、将来、不安でしょう?例えば、イヤなお話をして恐縮なんですが、ご主人様に万が一の事があった場合など、ローンをどうしよう?と言うリスクがありますよね?」って振って、「でも、そんな事があっても、大丈夫ですよ。団信という保険がございまして、もし、ご主人様に万が一の事がございましても、ローンは完全に消えます。生命保険会社が払ってくれます。つまり、残されたご家族には、お住まいがキレイな状態で残るんです。それを売ったら、まとまったお金も入りますしね。」ってアピールしていけ!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「賃貸に住み続けてたら、そんな保険はもちろんないんや。主人に生命保険加入させてるやろうけど、保険料もバカにならんしな。残った家族が働いて、頑張っていかなアカンやろ?つまり、賃貸に住み続ける方がリスク高いんやってことをすり込め!保険料も、金利の中に含まれてて、なおかつ低金利で買う事ができるんやってアピールしてな!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「ええか、絶対説明しろよ!嫁はな、絶対そんな不安は持ってて、シビアに考えおるからな。けっこう喰らい付きおるんや!主人が早く死んだら、資産が手に入る…なんて思いおるかもしれんからな。耳寄りな話やろが。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「しっかり理解するまで何回でも説明しろ!「イヤな話で申し訳ございませんが…」って言いながら何回でも説明してやれ!」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「低金利やら団信で嫁に少しは興味持たせて、んで物件を最大限気に入らすんや!どっちにしろ、嫁しか来てへんから、今日は決まらんのや。主人引きずってでも連れてこささなアカンからな。嫁が気に入らんまま帰るのと、気に入って帰るのとでは主人への話し方が全然違うからな。嫁興味ないって言ってながら、案外早く決まるかもしれんぞ、そいつ!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「絶対気に入らせろよ!んで、絶対主人連れてくるアポイント切ってこい!もし切れんかったら、連れてくるまで家に行かすからな!」 |
営業マン | : | 「はい。では、行ってきます!」 |
上司 | : | 「おう!またすぐ戻ってこいよ!」 |
そして、笑顔でスタッフルームから営業マンが出てくる…。
何事もなかったかのように、客の目の前に座り、支払いについてのプロの見解を述べる…。
爽やかな笑顔で、世間話をしながら、主人のいないところで、営業マンに色々吹き込まれる…。そして納得していく…。
これは、あくまでも架空の話であり、本当にこんな状況なのかは、想像にお任せします。
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