スタッフルーム実況中継
とある新築分譲マンションのモデルルームでの話である…。
モデルルームの奥に位置するスタッフルーム。ウソと説教と本音が飛び交う空間…もちろん一般人は立ち入り「絶対」禁止。
「少々お待ち下さい。」
接客中、爽やかな笑顔の営業マンがお客様にそう一言告げ、ニコニコしながらスタッフルームへ入っていく…。
これは、あくまでも架空の業者の話であり、優良な業者も数多く存在する。「こんな業者がいたらイヤだな…」という妄想として見ていただきたい。
スタッフルーム |
上司 | : | 「おう、あいつ何しに来たんや?」 |
営業マン | : | 「あの…申込キャンセルしたいって言ってます。」 |
上司 | : | 「な、何やと!!お前、ちゃんと申込の時に、念押ししといたんか!」 |
営業マン | : | 「はい、それはしっかりとしましたが…。」 |
上司 | : | 「アホか!しっかりとできてたら客やめるなんぞ言わんやろが!しっかりできてないんやろが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「だから、申込の時に手付けさっさと入れさせろって言ったんやろが!」 |
営業マン | : | 「ええ…。でも、客がどうしても金用意するのに時間がかかるからと…。」 |
上司 | : | 「アホか!そんなん逃げてるだけやろが!家まさに買おうかって時期に、金全くないわけないやろが!」 |
営業マン | : | 「でも、どうしてもないと…。」 |
上司 | : | 「考える時間がほしいからやろが!いざという時には不安になるし、ライバル物件もあるんやし、アホでも分かるやろが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「お前、どうすんねん!上にも報告してもうたし、売主にも言ってしもたやろが!こんなんやったら、隠しとけばよかったわ!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「まあ、報告は後で考えな仕方ない。んで、何でやめる言ってんねん?」 |
営業マン | : | 「それが、やっぱり気が変わったと…。」 |
上司 | : | 「だから、何やねん!どう気が変わってん!お前、つい2〜3日前の話やないか!何があったんや!」 |
営業マン | : | 「いえ、特にはないとしか…。」 |
上司 | : | 「お前、ナメられとるだけやろが!理由もなく、やめるわけないやろが!ちゃんと、脅し文句で突っ込んでるんか!」 |
営業マン | : | 「いえ、そこまでは…。」 |
上司 | : | 「アホか!客はな、やめる時はビビッてるんやから、訳の分からんこと言ってくるんじゃい!突っ込んでいかんかい!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
営業マン | : | 「んで、向こうからは何か言われたんか?「不安になった」とでも言ってるんか?」 |
営業マン | : | 「いえ、そうではないと…。」 |
上司 | : | 「んで、お前は何て言ったんや?」 |
営業マン | : | 「いえ、そうですかと…。」 |
上司 | : | 「アホかお前!納得してどうすんのや!不安になるに決まってるやろが!高い買い物なんやぞ!納得してたら、逆にすんなりやめれるて思って、調子に乗るやろが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「お前、すんなり帰したら、どうなるか分かってるやろな?」 |
営業マン | : | 「はい、すいません。何としてでも復活させます。」 |
上司 | : | 「当たり前やろが!「不安じゃないんでしたら、問題ないでしょうが。じゃあ、このまま進めますね。」ぐらいは言っとかんかい!そうでもせんと、理由が出てこんやろが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「申込とっている以上はな、こっちが納得せんと客もすんなり帰られへんやろうが!一瞬でもひるんだら終わりじゃ!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、どうせライバル物件が気になったりしてるんやろ?」 |
営業マン | : | 「いえ、よそは見てないと…。」 |
上司 | : | 「んなわけないやろが!お前、普通、ウチだけ見て決めるわけないやろが!そりゃ、俺らは「よそは見ない方がいいですよ。色々見てしまうと、悩みますからね。悩んでしまうと、買えなくなりますからね。」とか言うけどやな、ほんまはライバル物件にこっちの秘密にしとるネタ、バラされるからやろが。でも客はな、納得して「じゃあ見ません」とかほざいてもな、気になるから見おるんじゃ!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、お前まさか、それもすんなり引き下がったんちゃうやろな?」 |
営業マン | : | 「はい…。すいません…。」 |
上司 | : | 「このクソ野郎が!疑って疑って疑いまくらんかい!ライバルに色々吹き込まれたんちゃうんかい!ここは、隠さなアカン、ネタが多いからな。売れてへんのがバレるかもしれんからな。」 |
営業マン | : | 「はい、それについては気を付けていますが…。」 |
上司 | : | 「お前、気付けとったら今俺が言った事突っ込めてるやろが!下らん事ぬかすなアホ!」 |
営業マン | : | 「すいません。逆に、売れたことにしている部屋を指差して、「この部屋が空いてればなあ」って言ってましたが。」 |
上司 | : | 「アホが!言ってるだけやろが!無理なん分かってて無理難題ふっかけようとしてるんやろが!相手はな、こっちが諦めるように無理な事ばっかり言ってきおるんや!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「んで、何て答えたんや?」 |
営業マン | : | 「はい、「そうなんですか、それは残念ですね…」と…。」 |
上司 | : | 「アホかお前!何言ってんのや!第一、そいつ申込入れる前にその部屋の事なんか言ってなかったやろうが!そこらへん突っ込まんかい!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「んでそいつ、その部屋売れてなかったら買うんかい!突っ込まんか!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「買うとかぬかしおったらな、その部屋どうせウソで売れたことにしているだけやからな、その部屋は実は申込中やった事にして、買うかどうか分からんいう事にして、「すぐそのお客様に今すぐ契約するかどうか確認します。」って言え!んで、「そのお客様がキャンセルするとおっしゃられてるんで、じゃあその部屋に変更手続きします」って言ってこい!」 |
営業マン | : | 「いえ、もうその部屋は契約済みですと言ってしまいました。」 |
上司 | : | 「いらん事ばっかり言いやがって!機転きかさんかい!このアホが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「ほんなら、お前の不注意やったて事にして、「私が申し上げてたのはその下の部屋のことでした。お客様が今おっしゃられた部屋は申込中です。」て言って、今俺が言った話をしてこい!」 |
営業マン | : | 「はい。分かりました。」 |
上司 | : | 「おう。そう言ったら、どうせ、焦りおるから、そこから徹底的に攻めまくれ。」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「んで、そいつ、ライバル物件は見てないって言ってたけど、どうせウソやからな、ライバル物件の話出して、デメリット何でもかんでもぶちまけてこい!ウソでもかまわん!徹底的に言え!「あんな物件買う人はバカです」ぐらい言え!」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「そいつ、とぼけとるからな。もしかしたら、もうすでにライバル物件、買ってるかもしれんからな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「(自分の物件とライバル物件の図面を見比べながら)こいつの申込した部屋、このタイプやろ?ライバル物件で似たようなタイプは、このタイプや。んで、一応、「この部屋が空いてればなあ」とかもぬかしとるからな。このタイプと似てるタイプは…ここやな。よし、この2タイプを重点的に否定しろ!んで、場所やら何やらも、とにかく全否定してこい!」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「んで、その反応を見ろ。もし、その物件にするつもりがあるんやったら、少し態度が変わるかもしれんからな。姿勢が少し前のめりになったり、目がピクって動くかもしれんからな。反論なんぞしてきたら、決まりやからな!目から指先まで、そいつの体の全てを逐一監視しとけ!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、そいつ少しでもここ気に入ったんやからここ申し込んだわけやろ?もう1回ここのメリットを1から説明しろ!んで、今買っとかなアカン理由も1から説明しろ!納得するまで説明しろ!何時間かかってもかまわん!絶対帰すな!」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「あいつにはな、「今物件を買うという事は素晴らしい事です。」っていう事を、こんこんと説け!んで、この機会を逃せば一生買えんて事もたたき込め!んで、それでもウダウダぬかすようなら、人間を全否定してもかまわん!」 |
営業マン | : | 「はい、でも、もうすぐに帰りたがってますが…」 |
上司 | : | 「アホか!それを引き止めるのがお前の仕事やろうが!大体、お前そいつ泣かしたんか?」 |
営業マン | : | 「えっ?いえ…。」 |
上司 | : | 「泣かさんかい!お前、覚えとけよ、そんなやめたいとかぬかすヤツはな、例え交渉が失敗しても、せめて泣かして、二度とどこも買わんようには最低せんとアカンのや!それが不動産の営業っちゅうもんや!」 |
営業マン | : | 「はい、分かりました。」 |
上司 | : | 「ほんなら行ってこい!」 |
営業マン | : | 「はい。行ってきます。」 |
上司 | : | 「おう!絶対すぐ戻ってこいよ!お前が頑張って、どうしても無理なんやったら、俺が出ていって、そいつが人生やめたくなるぐらい徹底的に攻めたるわ!」 |
営業マン | : | 「ありがとうございます。」 |
そして、スタッフルームから営業マンが出てくる…。
今回ばかりはさすがに笑顔はない…。
なぜ笑顔がないのか?キャンセルされるのに腹が立ったのか?この接客が終わった後に悲劇が待っているからか?
これは、あくまでも架空の話であり、本当にこんな状況なのかは、想像にお任せします。
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