スタッフルーム実況中継
とある新築分譲マンションのモデルルームでの話である…。
接客ルームにて、いい雰囲気で営業マンと客が話している。しかし、客の口から、「う〜ん。まだ建物出来上がってないでしょ?実物を見てから決めたいな。」との言葉が出てくる。そして、
「少々お待ち下さい。」
接客中、爽やかな笑顔の営業マンがお客様にそう一言告げ、ニコニコしながらスタッフルームへ入っていく…。
これは、あくまでも架空の業者の話であり、優良な業者も数多く存在する。「こんな業者がいたらイヤだな…」という妄想として見ていただきたい。
スタッフルーム |
上司 | : | 「おう、どないや?」 |
営業マン | : | 「ええ、部屋は気に入っているのですが…」 |
上司 | : | 「ほう、ほんなら申込か?」 |
営業マン | : | 「いえ、「まだ実物が出来上がってないので、実物を見てから決めたい」と…」 |
上司 | : | 「実物の何を見たいんや?」 |
営業マン | : | 「モデルルームはイメージがわかないらしいです。」 |
上司 | : | 「んで、お前はどう対応したんや?」 |
営業マン | : | 「ええ、確かにモデルルームはオプションも多いですし、部屋もいじってますからね、と…。」 |
上司 | : | 「アホかお前は!何を正直に客に合わしてるんや!そんなん言ってたら、即決なんぞ一生できへんやろが!考えろ!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「どれがオプションか、モデルルームに書いてあるやろが。んで、図面もあるやろが。んで、モデルルームと言えども、実際の部屋や。注文住宅なんぞと違って、ある程度の広さの部屋もあるし、設備も部屋の中にちゃんと入れてるし、イメージもできるやろが。それで十分やないか!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「大体、部屋案内でモデルルームを見せて、イメージをわかせるのがお前の仕事やろが!それができんと、何が営業や!ふざけんのもええ加減にせんかい!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「実物を見たいっていう気持ちはみんな持ってるんや。でも、今まで契約したヤツらは、みんな実物なんぞ見んで決めてるんや。何でみんな実物を見んと契約するんや?」 |
営業マン | : | 「はい、実物が出来上がる頃には契約も順調に進んでるんで、条件のいい部屋がなくなってしまうからです。」 |
上司 | : | 「分かってんのやったらちゃんと説明せんかい。アホかお前は?知ってても、説明できんかったら意味ないやろが。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「大体、マンションを買う決め手は、立地と価格や。部屋も大事やけど、大体どこも似たようなモンや。違うとすれば、設備やらやろ?それは、モデルルームで十分確認できるやろが。実際の部屋が見たい、なんて寝言ぬかしてるヤツは、それが分かってないんや。それか、今買う度胸がないから、逃げてるんや。実際、実物が見れてる時期になったら、別の言い訳を用意するモンや。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「例えば、「じゃあ実物が見れるようになれば、ご連絡差し上げます。」と言うとしろや。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「ほんなら、ほとんどのヤツらが「ええ、是非お願いします。」って言うんや。検討していないヤツでもな。いわゆる社交辞令ってヤツや。「また来ます。」ってなモンや。時間も具体的に設定せえへんヤツが、来るわけないんや。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、「いざ現地見学できるようになりました!」って教えてやったら、大体何て答えおると思う?」 |
営業マン | : | 「えっ?「まあ、せっかくやから、見に行こか。」って言ってくれるかと…。」 |
上司 | : | 「おめでたいヤツやな、お前は。いざその時期になって、あっさりと前向きに答えてくるヤツなんぞゼロやと思っとけ。「是非お願いします。」ってセリフを吐いてたヤツらのほとんどは、「事情が変わりまして…」って別に理由つけて、来るのを拒否するんや。それか、そこでも「また行きます。」や。「いつお越しいただけます?」って聞いたら、「えっ?ちょっと最近忙しいので…。」や。何がどう忙しいねん?アイドルになってブレイクでもしたんか?逃げてるだけや。ほんま、クズどもが。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「そんなヤツは、実物を見ないと決めれんのやないんや。今買うのが怖いだけや。それか、気に入らんデメリットがあるんや。実物を見たいなんて言うヤツには、まず「他に決めかねる要素がおありですか?」って、不満点を探っていかなアカンのや。んで徹底的に逃げ道を塞ぐんや。ほんで初めて、客がまともなセリフ吐きおるんや。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「ええか、客は絶対逃げ打ってくるんや。そんなクズどもの寝言に耳貸す必要なんぞないんや。そいつも、例えば他の物件で安い部屋が気に入って、希望を満たしていれば、実物なんぞ見んでも買うんや。せっかく実物見れるようになって、こっちが期待して、見れますよ!って伝えた時に、「他買ったのでいいです。」ってこっちよりも竣工の遅い物件を平気で買ってるヤツもおるんや。そうなったら、お前が辛いやろ?もちろん、色んな意味でな。何せ、説教のオマケ付きやからな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「何か他にしっかりとした理由ないんか?例えば、今の賃貸の部屋を見ずに契約して、失敗したとかな。」 |
営業マン | : | 「いえ、それはないとは思いますが…。」 |
上司 | : | 「どうせしっかりと突っ込んでへんのやろ?」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「推測なんぞいらんのや、って同じことを何回も言わすなや。物覚えの悪いヤツやのぉ。チンパンジーか?お前は。」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「まあ、とにかく、そいつ逃げてるだけやから、他のデメリットを探っていけ。どうせ、部屋気に入ってるってのも、ウソやからな。突っ込みまくってやれや。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「たまに、強情なヤツがおるんや。「いや、他は何も問題ない。後は、実物を見るだけや。それで結論を出します。」ってな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「そこまで言ってきたら、「ここの売主の現地が見れる、別の物件に今日案内します」って言え。同じ売主の物件はな、似たような部屋ばっかりや。全く同じ間取りのときもあるからな。大体、平凡な売主は、同じく平凡な設計士に頼むんや。類は友を呼ぶってヤツや。んで、同じ設計士がほとんど全物件見ているときもあるからな。そんなヤツに臨機応変って言葉は無縁や。図面をコピーしてるだけちゃうか?何も進歩も見られへんのや。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「案内しますって伝えて客の様子を見るんや。「えっ?いや、それはいいです。」とか言ってくるんや。他の物件の図面を引っ張り出してきて、「ほとんど同じですよ。この部屋の実物が見れるんですよ。」って言っても、拒否してくるんや。それが客ってモンや。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「本音で実物を見たいヤツやったら、それで乗ってくるわ。県外の物件でも、見に行くんや。本気ならな。つまり、それであっさり拒否するヤツは、本気やないんや。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「それぐらい速攻で悟って、突っ込んでいかなアカンのやぞ。分かってんのか?お前は。ただ漠然と客の言うとおり、現地案内までこの客置いておこう、なんて余裕はお前に許されてへんのや。今徹底的に突っ込んで、どうしようもない、ってなって初めて、現地案内ネタで引っ張ってくるんや。それが不動産の営業や!肝に銘じておけ!基本は即決や!」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「ほんなら今言ったことを投げかけてこい。んで、反応を見ろ。」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「ええか、客なんぞはな、本音からモノしゃべってへんときに、突っ込まれると、一瞬ひるむんや。うっ…っていう素振りが、体のどこかで必ずあるんや。目、指、口、姿勢…どこかにな。全部監視しとけ!んで、ウソを暴いていくんや!」 |
営業マン | : | 「分かりました。では、行ってきます!」 |
上司 | : | 「おう。また何かあったらすぐ戻ってこい!」 |
そして、スタッフルームから営業マンが出てくる…。
実物のイメージをわかせることに必死な営業マン…。余裕などない。
・スタッフルーム実況中継<22> - 実物を見てから2へ続く
これは、あくまでも架空の話であり、本当にこんな状況なのかは、想像にお任せします。
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