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不動産 - Home > スタッフルーム実況中継 > 第20話
第20話 - 予算

とある新築分譲マンションのモデルルームでの話である…。

接客テーブルにて客と向かいあい、部屋の説明を必死にしている。そして、

「少々お待ち下さい。」
接客中、爽やかな笑顔の営業マンがお客様にそう一言告げ、ニコニコしながらスタッフルームへ入っていく…。

これは、あくまでも架空の業者の話であり、優良な業者も数多く存在する。「こんな業者がいたらイヤだな…」という妄想として見ていただきたい。

スタッフルーム

上司「おう、どないや?」
営業マン「はい…。なかなか、部屋を絞れません。」
上司「何でや?予算は?」
営業マン「いえ、決まってません。」
上司「アホかお前は?そりゃ決まらんやろが。それも把握せんと、どうやって部屋絞るつもりやねん、お前。」
営業マン「いえ、予算を聞いても、分からないと言われたので、全タイプの部屋を説明して、それで気に入った部屋を見つけてもらおう、と…。」
上司「アホかお前は!んな全タイプの説明してたら、時間かかってまうやろが!客が飽きてまうやろが!それで、何か情報聞き出せたんか?お前。」
営業マン「いえ…。」
上司「そんだけ時間かかって、説明してただけかい。そいつのアンケート見せろや。」
営業マン「はい。」
上司「お前…。希望月支払い額、6万円って書いてあるやないか。」
営業マン「はい。」
上司「根拠は?」
営業マン「ええ、今の家賃が6万円だからです。」
上司「んで、お前、何て答えたんや?」
営業マン「いえ、それについては何も話をしていません。まずは、部屋の説明して、気に入らせようかと…。」
上司「アホかお前は!まず、6万円でどの部屋買えるんや!んな部屋あるわけないやろが!まずそれを徹底的に理解させんとアカンやろが!」
営業マン「はい、それは思いましたが…、いきなり希望を否定してしまうと、印象を悪くするかなと思いまして…。」
上司「んなモン関係あるかい!後で「支払いが高いから…」って逃げられるに決まってるやろが!初めから、逃げの布石を打たれて、何で先回りして逃げ道を塞ごうとせんのや、お前は!このクズ野郎が!」
営業マン「すいません。しかし、部屋さえ気に入れば、支払いも納得させれるかと…。」
上司「やけに部屋にこだわるな。ほんなら、一番条件のいいタイプの部屋を、仮に気に入ったとして、支払いは何ぼや?」
営業マン「月の費用込みで、3年固定で127,000円です。」
上司「それを資金計算の時に提示されるんや。そいつの希望支払いは6万や。単純に倍や。納得させれんのか?」
営業マン「それは…。」
上司「お前…。アホやろ…。後のことを考えて話せんかい。」
営業マン「すいません。」
上司「客はアホやねんから、一旦、希望支払いを提示して、俺らが何も言わんかったら、その支払い以上の金額なら、割高やと思いおって、買う価値がないとか平気で言ってくるんや。俺らの提示した金額が、たとえ8万円とかやったとしてもや。」
営業マン「はい…、ただ、できるだけ条件の悪い部屋で、安値の部屋を気に入らせようとはしてますが…。」
上司「だから6万円で買える部屋なんぞないやろが!ドアホ!お前、俺にどんだけ説明さすつもりや!まず条件を変えさせろって言いたいんや、俺は!口答えばっかしやがって!もし、この客が後で「支払い高いからいいです。」て断られたら、耳から血出るまで電話営業さすぞ!」
営業マン「すいません。」
上司「大体、何で後で言いくるめようとするんや?お前は。初めにハッキリとその金額ではマンションなんぞ買えんってことを理解させてやった方が、客のためやろが。それで気分を害すようなクズは、ほっとけ。そんな人のアドバイスで不愉快になるヤツは、マンションの価値がない…とか言うレベルちゃうんや。そいつ自体に、生きてる価値がないんや。」
営業マン「はい。」
上司「んで、そもそも家賃と同じ支払いで、家なんぞ買えるわけないやろが。夢見すぎや。よくチラシで、家が家賃と同じ支払いでいけます、なんて言ってるけど、あれは月の費用抜きの支払い額や。月の費用入れたら、どこも家賃と同じ支払いなんぞムリや。チラシの見すぎで、頭イカれとんちゃうんか?そいつ。」
営業マン「はい。」
上司「客で、「チラシに書いてあるじゃないか!だから来たのに!何やねん!」とか、怒り出すヤツもまあ、おるけどな。己の無知をタナに上げて、チラシのせいや。俺らのせいや。ほんまに一生、家賃と同じ支払いでいけるんなら、誰も賃貸なんぞ住まんやろが。」
営業マン「そうですね。」
上司「そうですねって…お前、この客、このまま話進んだら、そうなるやろが。お前、分かってんのか?」
営業マン「すいません。」
上司「まず、支払いを6万って考えを改めさせろ。6万から、借入額を逆算してみろや。何ぼや?3年固定1.5%で。」
営業マン「1960万です。一番条件の悪い部屋の価格ですが…。」
上司「アホかお前は!月の費用込みで考えろって何回言わすんや!客と同じレベルの発想すんな!このクズ野郎が。」
営業マン「すいません。月の費用が20,000円なので、1300万です。」
上司「そや。んな部屋ないやろが。ライバル物件の支払いも提示して、マンション買うんなら10万円ぐらいは見て下さいって言え。つまり、そんなクソみたいな希望で、お前の買えるモンなんぞ何1つないんやってな。」
営業マン「はい。」
上司「いかに愚かなことを言ってるか、を徹底的に理解させてやるんや。」
営業マン「はい。しかし、ライバル物件の条件悪い部屋だったら、全く同じ金利で計算すると、8万円で済みますが…。」
上司「んなモン、ライバルの支払い計算の時は、ちょっと金利高めで計算したらええやろが。どうせ客なんぞ、ローン計算なんか知らんのや。「似たような条件で、近隣の物件の一番安い部屋で計算してみても、支払いはやはり10万円近くいきますよ。少なくとも、このエリアでは、支払いはまずムリですね。」とでも、言っとけや。」
営業マン「はい。」
上司「全く同じ条件で、とは言うなよ。ウソついてることになるからな。予算を上げさせることが目的や。どうせ、時間たったら、その提示した金額なんぞ、忘れおるけどな。アホやから。どこも高いっていうイメージを植え付けるんや。」
営業マン「はい。」
上司「んで、そいつ年収は?」
営業マン「いえ、それが、教えてくれません。」
上司「聞いたんか?」
営業マン「はい、聞きました。」
上司「何て聞いたんや?」
営業マン「いえ、普通に…、どれぐらいもらわれてるんですか?と…。」
上司「アホかお前は?そんな個人情報聞かれたら、イヤがるに決まってるやろが。聞き方工夫せんかい。」
営業マン「どうやって聞いたらいいんですか?」
上司「ちょっとは頭使え、このドアホ。まず、客に予算を決めることの大事さをこんこんと説くんや。んで、ローンの借入も、銀行が青天井で貸してはくれへんってことを理解させろ。つまり、支払いを頑張るって思わせて契約させても、銀行の借入限度枠オーバーしてたら、融資が受けられへんから、住めんのや。それを、まず説明していけや。」
営業マン「はい。」
上司「んで、じゃあ自分がどれぐらい借入できるのか?ってのが問題になるやろが。知ってて損はない知識やからな。」
営業マン「そうですね。」
上司「ほんで、「借入どれぐらいか知りたいやろ?」って投げかけたら、普通は「はい」って答えおるわ。「いや、別に…」なんてヤツはクズや。そんなんで買おうってのがそもそも間違いや。速攻でモデルルームから追い払って、塩ぶっかけてやれ。」
営業マン「はい。」
上司「んで、借入は年収ベースやってことを説明するんや。借入限度を知ることは大事なことやってのを理解させてからやぞ。ほんなら、年収が分からんと、借入限度が分からんから、教えんと仕方ないやろが。」
営業マン「そうですね。」
上司「でもな、そんな理由つけても、客は年収がいくらやって口で言うのには抵抗あるんや。せやから、紙を用意するんや。んで、年収を300万、400万、500万、600万…って書いていって、表を作るんや。んで、客の年収は大体どれぐらいや?ってその年収の欄に指をささせるんや。それで、計算して、借入限度を書いて、それを渡してやったらええわ。」
営業マン「はい。」
上司「俺らはそれでそいつの年収は分かるし、客も借入限度が分かって紙で残るから忘れへんやろ。どっちもプラスやないか。」
営業マン「そうですね。」
上司「それで聞いていけや。んで、客の借入限度を理解させて、それぐらい、普通みんな借りるんやってことを説明して、予算を決めてやれや。」
営業マン「分かりました。」
上司「もし、それでローンとは別に自己資金も放り込んだら、もっといい部屋も買えるって話振って、聞けるようなら自己資金の額も聞いとけ。」
営業マン「分かりました。」
上司「ええか、紙に書いて説明するんやぞ!何回も言うけど、客は口で言ってもすぐ忘れおるんや!コンパのねーちゃんの名前は覚えるくせにな。とにかく、初めに予算を決めて、支払い額もそいつの希望ではどこも買えんのや、ってことを納得させてから希望の部屋を誘導するんや。客に気に入った部屋を見つけてもらおうなんぞ、客主導やからな。主導権握られて、ええことなんぞ何もないからな。分かったか!」
営業マン「はい。」
上司「説明が後手に回ってもうたら、客が落胆したら、すぐ帰ってまうんや。部屋案内をする前に説明しとくにこしたことはないんや。俺らは現実を語ってるんやからな。客のためを思って言ってやってるんや。お前が、失礼なことを言ってしまって…なんて感情を持つ必要はないんや。まあ、一応、「失礼なことを申し上げますが…」って言っておいた方がええかもしれんけどな。」
営業マン「はい。」
上司「一言あやまった上で話進めた方が印象もええやろ。それでも失礼な…って怒るヤツもおるかもしれんけどな。大体、俺らはあやまってんねんぞ?あやまってんのに怒るんやぞ?どんな心狭いヤツやねんってなモンや。」
営業マン「はい。」
上司「ほんなら行ってこいや。絶対に部屋案内までに部屋を絞れよ!」
営業マン「分かりました。では、行ってきます!」
上司「おう!またすぐ戻ってこいよ!」

そして、スタッフルームから営業マンが出てくる…。


そして何事もなかったかのように、客の前に座り、客の希望支払い額をいきなり否定し出す…。
失礼で申し訳ございません、と心にもないセリフを吐きながら…。
これは、あくまでも架空の話であり、本当にこんな状況なのかは、想像にお任せします。


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