スタッフルーム実況中継
とある新築分譲マンションのモデルルームでの話である…。
モデルルームの奥に位置するスタッフルーム。ウソと説教と本音が飛び交う空間…もちろん一般人は立ち入り「絶対」禁止。
「少々お待ち下さい。」
接客中、爽やかな笑顔の営業マンがお客様にそう一言告げ、ニコニコしながらスタッフルームへ入っていく…。
これは、あくまでも架空の業者の話であり、優良な業者も数多く存在する。「こんな業者がいたらイヤだな…」という妄想として見ていただきたい。
スタッフルーム |
上司 | : | 「おう、どないや?」 |
営業マン | : | 「資金計算入ります。」 |
上司 | : | 「おう!やるやないか!んで?年収は?」 |
営業マン | : | 「400万です。」 |
上司 | : | 「自己資金は?」 |
営業マン | : | 「600万です。」 |
上司 | : | 「すぐに動かせる金なんか?」 |
営業マン | : | 「いえ、それは…。」 |
上司 | : | 「アホか!すぐに動かせんかったら、後で「やっぱり金ないです」とかぬかしてくるやろが!投資信託に金預けとるやつも多いんや。解約手数料とかも取られて、気持ち冷めるやつもおるやろが!しっかり確認しとけ!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「んで?その自己資金は諸費用分も入れてか?」 |
営業マン | : | 「いえ、確認してません。」 |
上司 | : | 「アホかお前は!確認せんか!それによって頭金変わってくるやろが!今すぐ確認してこい!」 |
営業マン | : | 「すいません。確認してきます。」 |
営業マン | : | 「諸費用も入れてというか、600万が全財産らしいです。」 |
上司 | : | 「全財産?ほんまか?もっと持ってるんちゃうんか?」 |
営業マン | : | 「いえ、そう言ってたので…。」 |
上司 | : | 「アホか!疑わんかい!客はな、「金ない」なんて言いながら、1000万ぐらい隠し持ってるもんなんじゃい!後で銀行との打ち合わせの時に、通帳残高に1000万とか書いてあるんじゃい!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「まあ、ほんまに全財産が600万なんやったら、諸費用が大体、150万ぐらいやから、それ抜いて450万全部放り込ませろ!」 |
営業マン | : | 「えっ?少しぐらい残しておいた方がよくないですか?」 |
上司 | : | 「アホか!んなことしたら支払い高くなってまうやろが!高かったら気持ち冷めるやろが!客のローン組んだ後のことを気にする必要なんぞないんや!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「客には、「皆さん通常、お金は全部入れます。なぜなら、支払いがかなり安くなり、貯金ができるからです。」って言って、年間支払い額見せて、どれぐらい金貯めれるか、具体的にシュミレーションしてやれ!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「普通、家買ったら、自然と節約するようになるんや。人によるけどな。でも、買う前はな、あまりイメージがわかんのや。それをしっかりと説明して、納得させろ!」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「俺やったら、後々のために、金残しておいて、支払い抑えたいって思ったときに放り込むけどな。早めに放り込んでしまったら後で臨機応変に対応できへんからな。客にはそんなこと教える必要ないんや!とにかく金放り込ませるんや!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「ところで、そいつライバル物件は見てるんか?」 |
営業マン | : | 「ええ、見てます。」 |
上司 | : | 「そこで、資金計算は出してるんか?」 |
営業マン | : | 「いえ、そこまでは確認してません。」 |
上司 | : | 「アホかお前は!どんな支払い提示されてるか分からんやろが!ライバルより安く見せな意味ないやろが!ウチが高いって思われるやろが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「ほんまに何してんのやお前は…。資金計算まで行くってことは、熱いんやぞ!それを分かってんのか?」 |
営業マン | : | 「はい、分かってます。」 |
上司 | : | 「分かっとったら突っ込んでるやろが!アホが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「んで、客の支払い希望は何かあるんか?」 |
営業マン | : | 「ええ、金利が上がることを見越して、長期固定で組みたいと…。」 |
上司 | : | 「アホか!支払い高いやろが!短期固定で組ませろ!」 |
営業マン | : | 「えっ…。でも、将来のことを気にしてるんで…。」 |
上司 | : | 「支払い見て気持ち冷めたらアカンやろが!それを何とか安くで納得させるのがお前の仕事やろが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「長期固定と短期固定の支払い両方出して、繰上返済の話をしろ。今が3年固定で当初優遇入れて1.375%や。フラットが3.5%や。2,950万の部屋やろ?自己資金放り込んで2,500万のローンや。月の支払いが3年固定やったらなんぼや?」 |
営業マン | : | 「75,000円です。」 |
上司 | : | 「フラットは?」 |
営業マン | : | 「103,300円です。」 |
上司 | : | 「月28,300円の差が出るやろ。3年間でなんぼや?」 |
営業マン | : | 「101万8,800円です。」 |
上司 | : | 「けっこうな額やないか。3年後に金利が3.5%になったとして、その時に繰上返済でその差額放り込んだら、月支払いどうなる?」 |
営業マン | : | 「96,500円です。」 |
上司 | : | 「そやろが!10万切るやろが!金利が2.125%上がって、フラット並になっても、繰上返済したら問題ないんじゃ!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、3年間に2.125%上がる可能性なんか、低いってことをすり込め!んで、もし上がっても、繰上返済したら大丈夫ってことをたたき込め!んで、もし金利が上がらんかったら、101万8,800円手元に残って、お得やってことをたたき込め!」 |
営業マン | : | 「はい。でも、3年固定でしたら、3年後基準金利になったら、支払い上がらないですか?」 |
上司 | : | 「んな事、ごまかせ!客なんぞはな、こんな金利の計算には慣れてないんや!繰上返済を絡めて、支払いのお得さをアピールしてたら、その気になってくるんや!買う気になってからその事に気付いても、「まあ、ええか」って思うんじゃ!その気になるまでが勝負じゃ!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「けっこう知らんやつが多いからな。知らんうちに、さっさと契約させてしまうんや!俺らは別に隠してるだけで、ウソついてるわけやないからな。知らんやつが悪いんや!」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「まあ、繰上返済なんぞは、貯金ができることを前提での話やからな。案外、支払いが安かったら、それ相応の生活してもうて、金なんぞ残らんもんや。余裕があるから、車買ったりとかな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、景気が爆発して、金利が急上昇したら、そいつはサヨナラや。んな事も考えんと、ようやるわ、こいつら。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「まあ、そやから、支払いできんくなって、差し押さえ物件が競売に出されて、安くで仕入れて儲ける業者が多いんやけどな。世の中うまい事できてるわ。」 |
営業マン | : | 「そうですね。」 |
上司 | : | 「んで、車で思い出したけど、そいつ車のローンないやろな?」 |
営業マン | : | 「あっ、確認してません。」 |
上司 | : | 「アホかお前!確認しとかんか!よく審査金利が4%で、2500万が借入限度で、車の残債300万あったら、ローン組めるのが2200万までやて勘違いしとるアホがおるけどな、銀行は月の支払いベースで見るんや!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「審査金利が4%で、2500万が借入限度やったら、月110,675円がそいつの支払い限度やろ?車のローン月支払いが30,000円やったら、月支払い限度は80,675円や。そうなったら、そいつのローン借入限度はなんぼになるんや?」 |
営業マン | : | 「1820万円です。」 |
上司 | : | 「そやろが!めちゃ下がるんや!確認してこい!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
営業マン | : | 「車のローンはないって言ってます。」 |
上司 | : | 「ほんまか?実はあるんちゃうやろな?」 |
営業マン | : | 「いえ、ないって言ってますんで…。」 |
上司 | : | 「ちゃんと今俺が言った、車の残債あったら、借入限度めちゃ下がるって説明して、聞いたか?」 |
営業マン | : | 「いえ…。」 |
上司 | : | 「アホかお前は!隠すやつけっこうおるんじゃい!後で銀行に審査出して、それを突っ込まれたら、完済証明出すまで時間かかるやろが!面倒やろが!しっかり説明しとかんかい!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「全く、すぐ客を信用しおって。アホが。」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「もし、ほんまにないとしても、銀行のローン実行済むまで、車は買うなって言っとけよ。よく、本承認おりたら、安心して、すぐ車買うアホがおるからな。承認取り消されるんも知らんとな!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「んで、そいつの自己資金600万っていうのは、親援助も含めてか?」 |
営業マン | : | 「えっ、それは確認してません。」 |
上司 | : | 「アホかお前!確認しとかんか!親援助含まれとったら、親の意向も気にせんとアカンやろが!親が「それじゃイヤ」なんぞぬかしおったら、俺らの苦労が一瞬にして意味なくやるやろが!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「自分の家やのに、親が納得せんとよう買わんアホが多いからな。気付けとかんかい!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「資金計算できあがったか?」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「ほんなら、今言ったことしっかり説明してこいよ!ねじ伏せろ!」 |
営業マン | : | 「分かりました。では、行ってきます!」 |
上司 | : | 「おう!またすぐ戻ってこいよ!」 |
そして、笑顔でスタッフルームから営業マンが出てくる…。
何事もなかったかのように、客の目の前に座り、支払いについてのプロの見解を述べる…。
爽やかな笑顔で、世間話をしながら、客は長期固定を希望しているはずが、強引に短期固定を勧められ、納得していく…。
これは、あくまでも架空の話であり、本当にこんな状況なのかは、想像にお任せします。
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