スタッフルーム実況中継
とある新築分譲マンションのモデルルームでの話である…。
モデルルームの奥に位置するスタッフルーム。ウソと説教と本音が飛び交う空間…もちろん一般人は立ち入り「絶対」禁止。
「少々お待ち下さい。」
接客中、爽やかな笑顔の営業マンがお客様にそう一言告げ、ニコニコしながらスタッフルームへ入っていく…。
これは、あくまでも架空の業者の話であり、優良な業者も数多く存在する。「こんな業者がいたらイヤだな…」という妄想として見ていただきたい。
スタッフルーム |
上司 | : | 「おう、どないや?」 |
営業マン | : | 「はい、まず今見てる賃貸ですが、家賃は大体10万ぐらいでは考えてると…」 |
上司 | : | 「あん?何でや?ここは地方やぞ。家賃10万の物件なんぞ、めちゃええとこやろが。そいつ、大都市の感覚で言ってるんちゃうんか?ほんまこっちで賃貸見てんのか?」 |
営業マン | : | 「ええ、見てると言ってたので…。」 |
上司 | : | 「だから、ほんまにこっちで見てんのか、って聞いてるんや。んで、どこらへんでどんな物件見てんのか、ってしっかり突っ込んでんのかお前は?」 |
営業マン | : | 「いえ、そこまでは…。」 |
上司 | : | 「アホかお前は?こっちで家賃10万以上する物件なんぞ、どこにあるんや?分譲賃貸ぐらいやろが。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「分譲賃貸なんぞ、もったいないやろが。キレイで設備がそろっとっても、所詮は賃貸や。何年住んでも、畳1枚自分のものにならんのや。家賃10万って聞いたときに、そういうトークはお前、当然したやろな?」 |
営業マン | : | 「え、ええ…「予算かなり見てますね。この近辺でそのご予算でしたら、かなりいい物件に住めますよ。」と言いましたが…。」 |
上司 | : | 「お前、俺の質問に答えろや。んなこと聞いてへんやろが!「んな予算でここで賃貸住むのはもったいない」ってアピールや!できてんのか!」 |
営業マン | : | 「いえ…すいません。」 |
上司 | : | 「アホかお前は!その話しろってさっき言ったやろが!相手の話聞いてビックリするだけなんぞ、猿にでもできるやろが!そこから話膨らませるのがお前の仕事やろが!下らん接客ばっかりしやがってこのクズ野郎が!んで、お前のそのトークで、相手なんて反応したんや?」 |
営業マン | : | 「ええ、そうみたいですね、と…。」 |
上司 | : | 「んで?」 |
営業マン | : | 「ええ、そのご予算でしたら、この物件では条件のいいお部屋が買えますと…。」 |
上司 | : | 「ちょっと待てやお前。そいつ、「そうみたいですね」って言ったんやろ?他人事やないか。主人本人が見てるんやないんか?」 |
営業マン | : | 「えっ?いえ、それは分かりませんが…。」 |
上司 | : | 「アホかお前は!聞き流しやがって!そこ大事やろが!しっかり突っ込まんか!そうせんと、その予算も、誰の希望かも分からんし、主人がそれを本当に望んでるんかも分からんやろが。んで、それをどんどん聞いていけるやろが!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「そんな突っ込みやすいセリフ吐いとんのに、あっさり部屋の説明に移りやがって、このアホンダラ!何を万人向けのトークを繰り返してんのや!テープレコーダーかお前は!リサイクルショップに売りに行くぞこの野郎!!」 |
営業マン | : | 「すいません。」 |
上司 | : | 「そういう時こそビックリしてみせて、「えっ!?ご主人様がご覧になられてるのではないのですか?」と聞いていかんかい!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「しかし、ほんまにその家庭、嫁主導っぽいな。情けない。んで、条件のいい部屋が買える、って言ってそいつ何て答えおったんや?」 |
営業マン | : | 「そうなんですか、と…。」 |
上司 | : | 「んで?」 |
営業マン | : | 「ええ、部屋の説明をして、どんな部屋がいいか?の聞き込みをしました。」 |
上司 | : | 「そうなんですか、って事は、そいつここの分譲マンションの相場も何も分かってないって事ちゃうんか?」 |
営業マン | : | 「そうですね。」 |
上司 | : | 「ほんならしっかりと説明してやらんとアカンやろが。この地方で家賃10万払って住むメリットなんぞ何1つないんやってことをな!せっかく何も知らんアホが来てくれてんのに、徹底的に吹き込んでこっち主導で進めんと損やろが!」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「お前、分かってんのか?チャンス逃しまくりやがって。お前がしっかり突っ込みまくらんと、俺が売主の定例で突っ込みまくられんのじゃ!ただでさえ、ここは今月契約ヤバいんやからな。そんな下らん接客ばっかしとったら、お前に定例いかすぞ!」 |
営業マン | : | 「え!?そ、それは…。」 |
上司 | : | 「ほんならしっかりやらんかい。んで?どんな部屋がええんやそいつ?」 |
営業マン | : | 「はい、やっぱり住むなら広い部屋がいいと…。」 |
上司 | : | 「どれぐらいやねん?」 |
営業マン | : | 「4Lがいいと…。」 |
上司 | : | 「何で?」 |
営業マン | : | 「両親を引き取る可能性があるのでと…」 |
上司 | : | 「ほんで何で4Lもいるんや?」 |
営業マン | : | 「主人、奥さん、両親、あとはこれからもし子供ができれば、と…。」 |
上司 | : | 「何を寝言ほざいてんのや、そいつ?贅沢ぬかしやがって。主人と嫁で1部屋で十分やろが。子供もできるかどうか分からんやろが。つまり、現状なら2Lで十分やろが。まあ、百歩譲って子供ができたとしても、3Lで十分やろが。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「いくらここではいい部屋が買えるって言っても、さすがに4L上層になってきたら3500万〜4000万はするやろ。ほんなら管修駐込みで10万はいくら短期固定でも無理や。でもそれを認識させとかんと、「何や、やっぱり買うのはもったいないわ。高いからやめよ」なんぞ思いおるからな。今は金利も底やし、物件価格も安いんや。それでこの価格なんや。つまり、今買わんかっても、これ以上条件が良くなることなんぞ無いんや。つまり、今買わんかったらそいつが条件を妥協せんかぎり一生買えんのや。それこそそいつがもったいないやろが。さっきの家賃は捨て金やって話と混ぜて、それもしっかり説明していかんかい。大体、そんなヤツが将来、言い訳ばっかするヤツになるんや。「自分に合う物件がなかった」なんぞ寝言ぬかしてな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「せやからまず3Lで十分やって思わせろ。んで、部屋もできるだけ下層、中層にさせろ。さっきも言ったけど、まず安い金額をそいつのアホな脳天に叩き込んでから嫁に会話ささなアカンからな。」 |
営業マン | : | 「しかし、客の話では上層の方が見晴らしがいいからいいな、と…。」 |
上司 | : | 「何やらと何やらは高い所が好きってヤツやな。見晴らしがいいから何やねん?景色なんぞすぐ飽きるぞ。んで、上層は風が強いから怖いぞ。自分らはええかもしれんけど、子供ができたら安全とはいえんしな。んで、両親なんぞは歳やろ?基本的に老人は高い所嫌がるヤツが多いぞ。まあ、両親に関しては、両親引き取る可能性があるんやから、どっちにしろ連れて来るやろ。そん時にねじ伏せたらええんやけどな。んで、上層は地震やら、低層に比べて揺れが大きいぞ。それも怖いぞ。それを話の節々に織り交ぜて、低層・中層にふっていけ。何なら上層を契約済にした価格表を持っていけや。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「まあ、価格表の販売状況はこっちの切り札やからな。客の理想をもっと聞いてからベストな部屋を誘導するために販売状況表はあるんやからな。それは置いとけや。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「ええか、条件のいい部屋にするとしても3Lで十分なんやってことを、客に思わせるんやぞ!こっちは徹底的に叩き込まなアカンけどな、強制するんやないんやぞ!あくまでも、そいつが「3Lでええやん」って、嫁に対してもしっかり説明できるぐらいにせなアカンのや。こっちから「3Lにしなさい」って命令するんやないんやぞ!こっちはあくまでも提案、誘導やからな!」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「ほんで、そいつ電車通勤の時間については納得させたんか?」 |
営業マン | : | 「はい、それは大丈夫です。賃貸でも分譲買うにしても、どっちにしてもこっちに住むのは間違いないと…。」 |
上司 | : | 「ほう、熱いやないか。一応、何回も確認しとけよ。まずこっちに住むのが間違いないってことをな。客の口から何回でも言わすんや。そうしとけば、客が逃げ文句になったときに徹底的に攻めれるからな。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「年収は?」 |
営業マン | : | 「いえ、それはまだです…。」 |
上司 | : | 「希望の部屋絞るんなら、しっかりと聞いていかなアカンやろが。まあ、ええわ。とにかく、安い部屋を安い条件で叩き込んどけ。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「ほんなら、どうせ今日は決まらんのやし、部屋も見せて気に入らせろ。んで、「ここで住む通勤のメリット」と「賃貸のデメリット」と「家を買うメリット」を納得させろ。それに引っかかるもんでもあれば、そいつは少なくとも嫁を連れてこよう、って気にはなるやろ。そいつの情報があまりない以上は、漠然とまんべんなくアピールするよりも絞った方がええやろ。ポイント絞って深く説明する方が客の心にも響くやろうしな。そいつのほほんってしてそうなアホやから、「しっかりと自分の事思ってアドバイスしてくれてるわ。」って勘違いするかもしれんからな。どうせ嫁の実家の近くに住むっていう時点で、嫁の意向が強いんや。しかも、最終的には嫁側の親も出てくるやろ。まず、その状況まで持っていかんと話にならんからな。」 |
営業マン | : | 「分かりました。」 |
上司 | : | 「んで、今日は資金計算はええわ。主人がそれを持って帰ったら、嫁が勝手に話進めんなや、やら、かなり営業されてる、やら思いおるかもしれんからな。嫁の意向が全く分からん以上、連れてきてからヒーヒー言わすしかないからな。でも、証拠としては残さんでも、そのアホの頭に鮮烈に残るぐらいこの物件の支払いの安さはたたき込んでやれよ。」 |
営業マン | : | 「はい。」 |
上司 | : | 「ほんなら行ってこいや。嫁を連れてくることを前提に話しろよ!「奥様がお越しになられたら…」やら、普通はみんな嫁連れてもう1回来るんやってことを納得させろ!」 |
営業マン | : | 「はい。では、行ってきます。」 |
上司 | : | 「おう!」 |
そして、笑顔でスタッフルームから営業マンが出てくる…。
そして何事もなかったかのように客の目の前に座り、ニコニコしながら賃貸に住むことのもったいなさ、将来に対する脅しをかけていく…。
これは、あくまでも架空の話であり、本当にこんな状況なのかは、想像にお任せします。
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